将棋の藤井聡太6冠(竜王・名人・王位・棋聖・棋王・王将=23)が日刊スポーツなどの新春インタビューに応じた。午(うま)年の年男となる今年は、プロデビュー10周年の節目でもある。好きな駒の「角」に例え、「進化」を誓った若き王者が再び、全8冠制覇を目指す。
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史上最年少の14歳2カ月でプロ棋士となり、デビュー29連勝で藤井フィーバーを巻き起こし、23年10月には、前人未到の全8冠制覇の偉業を達成した。将棋界の数々の歴史を塗り替え、社会にも影響を与えた10年の歩みを、藤井は「実感としてはあっという間でした」と振り返った。
この10年で最も印象の残る1つとして24年6月、同学年の伊藤匠2冠との叡王戦5番勝負を挙げた。「23年の8冠獲得と24年の(初の)失冠は同じぐらい印象に残る出来事だった」。ライバルの強さを肌で感じ、シリーズを通して自らの課題を突きつけられた。
7冠を保持して25年をスタートし、名人、王位などを防衛し、竜王戦で5連覇を達成し、自身3つ目の「永世称号」を獲得した。タイトル通算獲得数は歴代単独4位の32期に到達。7番勝負では無敗である一方、王座戦5番勝負で伊藤に敗れて王座を失い、6冠に後退した。
タイトル戦での2度の敗北は「さらに強くなる」ための「試練」と、とらえている。「25年は中終盤の精度が十分ではなかった。序盤の作戦と中終盤の力とのバランスを取ることに取り組んでいく必要があるのかなと思う」。
多くの棋士が研究に採り入れる人工知能(AI)は驚異的なスピードで進化する。「研究の作戦の準備が深く、高度になっている」。目の前の一局に集中する「探究心」が揺らぐことはないが、「自分自身の将棋の幅を広げるために、おもしろい将棋を追究していきたい」と未知の領域へ気持ちを新たにした。
午(うま)年の年男となる。好きな駒の「角」に今年への思いを込めた。角が敵陣に入り、裏返る(成る)と、「馬」になることに例えて「角が馬になるような成長であったり、戦法を目指せる1年にしたい」。
今年最初の対局は7日の叡王戦本戦トーナメント1回戦。4連勝すれば伊藤への挑戦権を獲得できる。「現段階で8冠を意識するのはなかなか難しいが、実力を上げることで近づけるという意識を持って取り組んでいきたい」。全8冠再挑戦の1年が始まる。【松浦隆司】
【藤井6冠デビュー10年 印象に残るベスト3】
<1>加藤一二三・九段とのデビュー戦(16年12月24日) デビュー戦という特別な一局で、加藤九段と対戦する機会に恵まれ、盤を挟んで、将棋に対する考え方、信念を感じることができたのは大きな経験だった。
<2>史上最年少の17歳11カ月で初タイトルの棋聖を獲得(20年7月16日) 棋士になり、タイトル獲得、挑戦は1つの目標だった。なかなかそこに近づくのが難しい状況が続いていただけに初タイトルは大きな出来事だった。
<3>全8冠制覇(23年10月11日)&初失冠(24年6月20日)
8冠と初失冠は同じぐらい印象に残る出来事だった。叡王戦では伊藤叡王の強さを存分に感じた。

