この馬で勝てたからこそ-。今回のケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は大阪・原田竣矢記者が、UAEダービーを制したワンダーディーン(牡3、高柳大)を担当する、中野拓也助手(30)を電話取材した。日本調教馬のUAEダービー5連覇達成の瞬間、涙を見せたわけとは。その裏側にせまった。

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もちの木賞でパイロマンサー(牡3、吉村)の2着。ポインセチアSではロックターミガン(牡3、石坂)の2着。国内で歯がゆい思いを重ねたワンダーディーンが、世界の強豪たちを圧倒した。ドバイ遠征をした日本勢の中で唯一の白星。この活躍には心が震えた。

チャーチルダウンズ競馬場でワンダーディーンと写真に納まる中野助手(中野拓也助手提供)
チャーチルダウンズ競馬場でワンダーディーンと写真に納まる中野助手(中野拓也助手提供)

勝利後の中継映像には、涙を流す1人のホースマンの姿が映った。ディーンを担当する中野助手だ。次の舞台、アメリカに到着後、涙の理由を打ち明けてくれた。

「お母さんのワンダーシエンプロが、最初に担当させてもらった新馬なんです。そのこどもで海外の重賞を勝ててうれしかった。この世界に入ってきてよかったと思える瞬間でした。感情が爆発しました」

中野助手は2019年1月、高柳大厩舎でキャリアをスタート。携わった母シエンプロはディーンと同様、ダートを駆けた思い出の一頭だった。

「こんな地味な血統なので。シエンプロのこどもで、この舞台に来られたことへの感謝は、ケンタッキーに着いてからも感じますね」と中野助手。血統表をさかのぼると、母の父に統一G13勝のワンダーアキュート。母の母と3代母は中央0勝。4代母が中央1勝。5代母は1988年の桜花賞馬アラホウトク。ロマンであふれた血統だ。

勝利の味も格別だった。サウジダービー4着からの転戦。3歳馬にとって簡単な挑戦ではなかったが、レースでは2着の地元勢シックススピードに2馬身以上、3着パイロマンサーには8馬身以上の差をつける圧勝を見せた。勝因は初めての海外遠征でも納得の出来で送り出せたこと。「餌は日本では全然食べないけど、海外に行ったらすごい食べてくれます。先生(高柳大師)とレース前、ご飯に行った時に『これで負けたら仕方ないよね』と話していました」。

UAEダービーに向けて調整を進めるワンダーディーン(中野拓也助手提供)
UAEダービーに向けて調整を進めるワンダーディーン(中野拓也助手提供)

次に目指すのは5月2日に行われるケンタッキーダービー(G1、ダート2000メートル、チャーチルダウンズ)の頂点。

「最初で最後だと思う。もらったチャンスを生かすために、できるだけいい状態でレースに出走させるのが僕の仕事です」

ディーンと臨む3つ目の冒険。思い描く最高のシナリオへ。母シエンプロも美しい声で、そっと、背中を押してくれるはずだ。

◆中野拓也(なかの・たくや)1995年(平7)6月6日、大阪府生まれ。幼稚園から中学3年生までサッカーを続けた。競馬に興味を持ったのは高校生の時。競馬好きだったアルバイト先の店長に影響されことがきっかけ。2019年1月から現在まで栗東・高柳大厩舎の調教助手。

【原田竣矢】(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)