フェブラリーSを制したレモンポップと坂井騎手(撮影・丹羽敏通)
フェブラリーSを制したレモンポップと坂井騎手(撮影・丹羽敏通)

福永騎手のJRAラスト騎乗となった日に、坂井騎手が次なるスター騎手への階段を上り始めました。レモンポップの力が1頭だけ違ったのもありますが、鞍上の見事というべき落ち着いた騎乗が光りました。

ハナに立とうかという好スタートを決めて、スッと2列目に待機。3コーナーでは進路を確保するように前に壁がない外へ出し、直線はひと呼吸、ふた呼吸と辛抱してから追い出しました。マイルの距離がどうかという思いもあったのかもしれませんが、とにかく焦らない、慌てない、落ち着いたエスコートでした。

22年10月、スタニングローズで秋華賞を制した坂井瑠星騎手
22年10月、スタニングローズで秋華賞を制した坂井瑠星騎手

坂井騎手は昨年の秋華賞(スタニングローズ)でJRA・G1初制覇。朝日杯FS(ドルチェモア)も制しました。G1を勝つことで余裕が生まれ、自信がつく。そうして馬に恵まれ、また結果が出る。この半年で一流ジョッキーへの軌道に乗りました。福永騎手がいなくなるジョッキー界を今後、引っ張る騎手になってもらいたいですね。

22年12月、朝日杯FSを制したドルチェモア(左)と坂井瑠星騎手
22年12月、朝日杯FSを制したドルチェモア(左)と坂井瑠星騎手

レモンポップの将来も楽しみです。前後半800メートルずつのラップが46秒6-49秒0という前崩れの中で、好位から勝ちきりました。2着レッドルゼルが後方2番手から、3着メイショウハリオはつまずいて大きく出遅れた最後方からですから、先行馬にはかなりきついペースだったはずです。1頭だけ絶対的なスピード値が違いました。

その2着ルゼルは、ペースを考えればいい位置取りでしたし、前半が速い流れならマイルももちますね。3着ハリオは、つまずいた時に浜中騎手がよく落馬せずに耐えたと思います。あの位置から3着ですから、この馬も強い馬です。

最後に、福永騎手のオーヴェルニュは12着でした。あまり極端な乗り方はせず、こうすれば勝てるというセオリー通りの騎乗をする彼らしい競馬だったと思います。まだサウジアラビアでの騎乗が残っていますが、ひとまずお疲れさまでした。ダービージョッキーからダービートレーナーへ、活躍を期待しています。(JRA元調教師)

ファンに手を振って引き揚げる福永騎手(撮影・丹羽敏通)
ファンに手を振って引き揚げる福永騎手(撮影・丹羽敏通)