また1頭、とんでもない馬が誕生しました。リバティアイランドが後続につけた6馬身差は、言葉を失う強さです。レース後すぐ、アーモンドアイの18年オークスと見比べました。同じデビュー5戦目、アーモンドも好位から上がり最速で強い勝利でしたが、着差は2馬身です。勝ち方の強さが違うと言いますか、適切な言葉がすぐには浮かびませんが、このまま順調にいけばG1を9勝したアーモンド以上の馬になる可能性もあるということです。

ルメール騎手は後ろを振り返る余裕も。18年オークスで快勝のアーモンドアイ
ルメール騎手は後ろを振り返る余裕も。18年オークスで快勝のアーモンドアイ

川田騎手には相当なプレッシャーがあったと思います。ですが、それを上回る「自信」が私には見えました。まさに余裕しゃくしゃくです。スタートを決めて1コーナーを回る時に、もう確信していたのではと想像します。少なくとも私はもう勝ったと思いました。

直線突き抜けてオークスを制したリバティアイランドと川田騎手
直線突き抜けてオークスを制したリバティアイランドと川田騎手

川田騎手は追い切り時の共同会見で、ゲート入りから開くまでの数秒間、観客の皆さんに声援を我慢してほしいとお願いを出しました。私も気持ちはすごくわかります。馬は繊細です。ましてコロナ禍でしか競馬を経験していない3歳牝馬にとって、大観衆の府中のスタンド前は怖いものです。もちろん、リバティのためだけでなく、全馬が能力を出せるようにとのお願いだったと思いますし、実際に協力してくださったお客さまには私も感謝します。

管理する中内田師は、早くから海外で修業し、人脈も広い将来有望な若手トレーナーです。ついにこういう馬と巡り合い、小さい時から知る川田騎手とともにいよいよ世界に打って出る、という感じでしょうか。活躍が楽しみです。

2着ハーパーは、ルメール騎手がリバティをマークして運びましたが、突き放されました。相手が悪かったとしか言いようがありません。3着ドゥーラは若い斎藤騎手が思い切った競馬で長くいい脚を引き出しました。大舞台での好騎乗は本人にも自信になったでしょう。4着ラヴェルはさすがリバティを負かしたことのある馬です。最も見せ場のある競馬でした。(JRA元調教師)

2冠を達成したリバティアイランドをねぎらう川田騎手(撮影・丹羽敏通)
2冠を達成したリバティアイランドをねぎらう川田騎手(撮影・丹羽敏通)