史上初のG1(Jpn1含む)10勝を果たした砂の王者-。学習院大在学中に「日本中世史」を学んだルーキー下村琴葉(ことは)記者が、歴代スターホースの逸話を探る連載「名馬秘話ヒストリア」の第7話はホッコータルマエ。ほとんどのレースで手綱を取った幸英明騎手(46)が当時を振り返る。

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16年川崎記念、ホッコータルマエは3連覇で史上初となるG1&Jpn1通算10勝目を挙げた。芝と比べてパワーが求められる砂の舞台で数々の熱戦を繰り広げ、ダート王者の座をものにした。

12年の新馬戦では単勝オッズ107・7倍の人気薄だった。幸騎手が「体力的にも動きも、急にバンとよくなってくることはなくて、本当にちょっとずつによくなってきました。(走る馬としては)珍しい」と話すように、9戦目のレパードSくらいから徐々に力をつけるようになる。

通算17勝と多くの勝ち星をあげたが、「馬混みで競馬できる馬だったら、もっと勝てた」と鞍上は話す。性格は素直でいい子。その一方、途中でやめる癖があり、馬混みが得意ではなかったという。「キックバックを嫌がったり、集中力がなくなる馬でしたね。(馬混みに)入れたときは大敗している」。

調教時の馬混み対策を聞くと「調教の時は気にしないんですけどね」。どうやら馬なりにレースと調教を区別していたようだ。「本当にこんなに重賞いっぱい勝ってる馬なの? ってくらい動かなかった。併せ馬でも遅れることが多かったです」。レースに行くとギアチェンジできる器用さを持ち合わせていたのだろう。

引退後は種牡馬となり、初年度産駒は20年にデビュー。今年の新馬戦ではカシノサヴィやツウカイリアルの鞍上を幸騎手が務めた。「馬によっては似てるところがありますね。気性いい子が多くて乗りやすいです」と父との相似点を挙げる。3歳ブリッツファングや4歳レディバグもダート戦で活躍中。これからも父として砂の猛者を送り込む。

◆ホッコータルマエ 2009年5月26日、北海道浦河町・市川ファーム生産。父キングカメハメハ、母マダムチェロキー(母の父チェロキーラン)。馬主は北幸商事。栗東・西浦勝一厩舎所属。通算成績39戦17勝(うち地方19戦11勝、海外3戦0勝)。主な勝ち鞍でJpn1は、13年かしわ記念、JBCクラシック、13、15年帝王賞、14年~16年川崎記念、G1は13~14年東京大賞典、JRA・G1は14年チャンピオンズC。総獲得賞金は11億1459万1800円。