あの「伝説の快速馬」と同じ超高速逃走劇だった-。

7番人気のパンサラッサ(牡5、矢作)は、懸案だったスタートを決めて、大逃げを打った。

一時は後続を20馬身近くも離した逃げっぷりに、東京競馬場内も大きくどよめき、盛り上がった。

1000メートルの通過タイムは、なんと57秒4。1998年にサイレンススズカがマークした通過タイムと同じだった。

あの年のサイレンススズカは、1番枠から好スタートを切って、そのまま逃げた。ラップタイムは200メートル通過が13秒0、400メートル通過が23秒9、600メートル通過が34秒6、800メートル通過が45秒8、そして1000メートル通過が57秒4だった。

2番手にいたサイレントハンターに約10馬身、そこからさらに10馬身ほど離れた3番手にオフサイドトラップが続く、というよりも置き去りにするような超高速の大逃げだった。しかし、1200メートルを過ぎた後の4コーナー手前で悲劇に見舞われ、天国に召された…。

あれから24年。パンサラッサが刻んだラップタイムは、最初の200メートルが12秒6、400メートル通過が23秒5、600メートル通過が34秒7、800メートル通過が46秒0、そして1000メートル通過が57秒4だった。

サイレンススズカが天国へと旅立ったあの4コーナー手前でもスピードは衰えず、府中の長い直線で独走態勢に持ち込んだ。このまま逃げ切るのか-。多くのファンが、そう思ったことだろう。

残り30メートル付近でイクイノックスの決め手に屈してしまったが、レースを大きく盛り上げ、沸かせた立役者には違いなかった。そして、あの伝説の“スピードスター”と同じ1000メートルの通過タイム…。負けはしたが、この日のパンサラッサの走りは、ファンに多くの夢を与え、いろいろな記憶を思い出させてくれたのではないだろうか。偉大な敗者として、長く語り継がれていくことだろう。