1999年のクラシックは「3強」が熱いレースを繰り広げた。皐月賞はテイエムオペラオー、ダービーはアドマイヤベガ、菊花賞はナリタトップロードと、3頭がタイトルを分け合った。あれから24年。関係者が当時の激闘を振り返る-。

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あんな馬は見たことがない-。テイエムオペラオーは、生涯で1度出会えるかどうかの名馬だ。そんな“世紀末覇王”だが、99年の皐月賞では5番人気。王道路線を歩んできた弥生賞1着のナリタトップロード、同2着アドマイヤベガなどに人気を譲る形となった。「毎日杯組は皐月賞であまり走ってなかったからね」。そう振り返る和田竜二騎手だが、当時はかなり自信があったという。

「祐一(現福永調教師)が前の週でG1(桜花賞=プリモディーネ)を勝ってたから、あのときは気合が入ったよ。流れがきているって意気込んでいた。馬も勝つごとに上り調子で、心身ともに急激に良くなっていた感じだったし」

前哨戦の毎日杯で見せた衝撃的なパフォーマンスが忘れられなかった。「なんやこの馬は。とんでもないなと思った」。好位から脚を伸ばし4馬身差の快勝。他馬との圧倒的な実力差を見せつけ、デビュー4年目の21歳の手に確かな手応えを残した。「これならやれる」。陣営は追加登録料を払って皐月賞出走を決めた。

レースは、そんな感触通りになった。発表は「良」ながら雨で馬場が悪化していた中山競馬場。「当時の道悪、中山は大外一択だった。昔から(武)豊さんを見てきたし、あの乗り方しか思い浮かばなかった」。位置取りは思ったより後ろになったが、すぐ前に武豊騎手のアドマイヤベガがいて「これなら大丈夫」と心を落ち着かせた。最後の直線は無我夢中。馬を信じたことが、人馬とも初めてのG1制覇をたぐり寄せた。

「ウマ娘」の人気キャラクターとして、今も多くのファンがいるオペラオー。「カイバにいつもと違うものが入っていたら食べなかったし、馬房ではずっと同じ位置でじっとしている。神経質でおぼっちゃまだったんだよ」と当時の相棒を振り返る。

ライバルと激闘を繰り広げた3歳時は「皐月賞馬」だった肩書が、古馬になってG1勝利を積み重ねて「世紀末覇王」と呼ばれるまでになった。“頂”を極めたオペラオー。その栄光は、色あせることなく輝き続ける。

(※4月発売「ウマ娘&皐月賞特集号」掲載記事)

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