凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月1日=パリロンシャン)に今年、関東の5歳牝馬スルーセブンシーズ(尾関)が単騎挑む。同馬の調教師、騎手、関係者らを取り上げる連載「海を渡ったスルーセブン」が、今日25日からスタートする。第1回は尾関知人調教師(51)。13年秋にフランス遠征を経験して、管理馬での凱旋門賞出走への思いを秘めた。10年後、その夢が実現する。【取材・構成=木南友輔】

のべ33頭の日本馬が挑み、はね返され続ける凱旋門賞に今年挑むのがスルーセブンシーズだ。宝塚記念で現役最強馬イクイノックスに首差まで迫った走りが遠征を決断させた。

尾関師 中山牝馬Sを勝って、次の競馬を相談する過程で宝塚記念に決まり、その流れで選択肢として登録し、チャレンジできる結果が出れば前向きに、ということになりました。

10年前、開業5年目の13年秋にフランス遠征を経験。フォワ賞(5着)、ドラール賞(7着)と2つのG2に出走した管理馬ステラウインドが、キズナの帯同馬だった。

尾関師 あの時は古馬にオルフェーヴルがいて、キズナも素晴らしい走りで入着した。少し先に壁が見えていたようで、それがなかなか高い壁だったと思う。凱旋門賞に自分も参加してみたいという気持ちになりましたし、タフなレースで、そこで本当に最後まで頑張り切れる強さが必要なのだと感じました。こうやって、自分の管理馬で出られるのは本当に光栄です。

福島県のノーザンファーム天栄で検疫を終えて15日に出国。今は不安と期待感が入り交じる。

尾関師 (道悪は)ミモザ賞を勝っているけど、日本と向こうの道悪はレベルが違うと思う。ただ対応する可能性は感じています。レースは前半の入りは鍵になるのかな、という認識です。位置は後ろすぎても駄目で、絶妙なところを行ければ。本格化前のオークスしか2400メートルを走っていないので、そこも対応が必要。ただ宝塚記念から1ハロンの距離なら問題ないと思うし、ルメール騎手は全部勝ってくれているので(コンビ3戦無敗)。

19、21年にグローリーヴェイズで香港ヴァーズを制覇。舞台は違うが、欧州の一流馬に競り勝っている。

尾関師 相手関係はまだ詳しく調べてはいませんが、まずは馬自身のベストを尽くせるように。5歳馬で残りの競走生活も見えてきていますが充実していて、今年に入った時に凱旋門賞に行けるとは思ってなかったし、今回の挑戦はスルーセブンシーズが自らつかみ取ってくれたものです。

世界中での活躍を願い、名付けられた馬名の意味は「七つの海を越えて」。筋書きのないドラマの、クライマックスがやってくる。

◆スルーセブンシーズ 父ドリームジャーニー、母マイティースルー(母父クロフネ)。20年9月の2歳新馬戦でデビュー勝ち。今年3月の中山牝馬SでJRA重賞初制覇。通算12戦4勝。3回出走したG1はオークス(9着)、秋華賞(11着)、宝塚記念(2着)。

◆尾関知人(おぜき・ともひと)1971年(昭46)12月17日、千葉県生まれ。岩手大卒。99年4月にJRA競馬学校厩務員課程入学。同年10月トレセン入り。藤沢和雄厩舎、藤原辰雄厩舎、和田正道厩舎、大久保洋吉厩舎に所属。09年に開業し、11年新潟2歳SをモンストールでJRA重賞初制覇。16、17年にレッドファルクスでスプリンターズS連覇。JRA通算340勝(24日現在)。プロ野球は中日ファン。自身のブログ「NO HORSE、NO LIFE!」で積極的に発信を行っている。