“2強”を破ったのは新星だった。4番人気エルトンバローズ(牡3、杉山晴)が4連勝で初の古馬重賞挑戦を飾った。勝ち時計は1分45秒3。キャリア8戦の同馬は、西村淳也騎手を鞍上に迎えてから4戦4連勝。次走は馬の様子を見て判断されるが、若武者と若駒の息のあった名コンビが栗東から誕生した。

思いが神に通じた。最後の直線。内を選択したエルトンバローズが一番に抜け出した。外からは春のマイルG1・2勝馬ソングラインが。大外からもG1馬のシュネルマイスターが猛追をみせる。ゴールは横一線。西村淳騎手は自分が1着だとは確信できなかった。「外が優勢かなと。なので、神様にお祈りをしていました」。結果は鼻差の1着。検量室前に引き揚げた鞍上は感情を爆発させた。天に向かってガッツポーズ。馬の首筋にキス。「よっしゃあ」と絶叫した。

価値のある、中身の詰まった1勝だ。相手にG1馬が2頭。重賞勝ち馬5頭が名を連ねた。「すごいメンバーと戦わせていただいて、エルトンの経験値が上がると思います」。キャリアで左回りは2戦目。2月中京の未勝利では、勝ち馬から1秒6差の9着に敗れていた。陣営もその記憶が色濃く残っていた。杉山晴師は「イメージが強かったんですよね。だから馬を信じ切れていなかった部分があります。申し訳なかったですし、だからこそすごいなと思います」と脱帽。イメージを払拭した鞍上にも感謝しかない。「彼のここ1、2年の競馬に対する姿勢は目を見張るものがありました。厩舎も彼も、さらに成長していきたいですね」。

3冠女王への感謝も忘れない。6日、厩舎の代表馬であるデアリングタクトが引退を発表した。そんな彼女に対する、はなむけの1勝にもなったこのレース。同師は「デアリングのためにも、強い馬を育成していかないといけませんね」と目尻を下げた。名馬が去り、名馬候補が成長を遂げている。杉山晴厩舎の勢いは、とどまることを知らない。【阿部泰斉】