千両役者だ。“マジックマン”の異名を持つジョアン・モレイラ騎手(40)に導かれ、G1初挑戦のキングズソード(牡4、寺島)が3連勝で初戴冠した。勝ち時計は2分5秒1。ノットゥルノ、テーオーケインズのG1馬2頭を外から一気にかわして4馬身差の圧勝。世代交代を告げた。鞍上はJBCクラシック初の外国人騎手制覇で、寺島良調教師(42)はG1初勝利となった。

 

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日本ダートの祭典でもマジックマンの手綱がさえた。大歓声が待ち受けている大井の直線で、モレイラ騎手はキングズソードを外に持って行った。内ではノットゥルノ、テーオーケインズが競り合っている。この舞台のG1を過去に制している猛者だ。3頭横並びになった。しかしその時間は一瞬だった。キングズソードは上がり37秒9の脚を繰り出し、4馬身差をつけた。殊勲の鞍上は「非常に強かった。(1頭)抜けたところが気持ちよかった」と余裕の勝利を振り返った。

開催23回目にして、JBCクラシックを初めて制した外国人騎手。その名にモレイラの文字が刻まれることになった。かつてペリエ、ルメール、M・デムーロ、C・デムーロ…。これまで外国人騎手のべ14回の挑戦を封じてきた高き壁をとうとう打ち破った。「短期免許で来られて、素晴らしいオーナーと馬に恵まれた」と快挙に酔いしれた。

マジックマンは厩舎にも栄冠をもたらした。寺島師は待望のG1初勝利だった。くしくも厩舎の重賞初勝利(17年プロキオンS)がキングズソードの全兄キングズガード。縁の深い血統でのビッグタイトルは何よりのプレゼントだ。師は「直線は久々に声が出ました。うれしいです。それと驚きの方が大きい。お兄さんで重賞を勝たせてもらったけど、大きいところを勝てなかった」と笑みを浮かべる。全弟は4歳にして日本ダート界の最高峰に到達し、さらに躍進が期待される。トレーナーは「兄は6~7歳で成長した。この馬もこれからさらに上があると思うと楽しみです」。同じ舞台には暮れの東京大賞典がある。次走は未定だが、夢が広がる勝利となったことは間違いない。名手に導かれたダートの新星。その姿に大井競馬場は沸き立った。【舟元祐二】

 

 

◆外国人騎手のJBCクラシック騎乗 第1回が行われた01年ペリエ(ノボトゥルー4着)、03年ペリエ(スターキングマン2着)、M・デムーロ(イングランディーレ6着)、14年ルメール(クリソライト2着)、15年M・デムーロ(ハッピースプリント5着)、16年ルメール(ノンコノユメ4着)、17年ルメール(オールブラッシュ6着)。18年ルメール(サンライズソア3着)、C・デムーロ(オールブラッシュ10着)、M・デムーロ(アポロケンタッキー13着)。19~21年M・デムーロ(いずれもオメガパフューム2着)、20年ルメール(チュウワウィザード3着)と、これまでのべ14回の挑戦で2着が最高だった。

 

 

◆キングズソード ▽父 シニスターミニスター▽母 キングスベリー(キングヘイロー)▽牡4▽馬主 (株)ヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン▽調教師 寺島良(栗東)▽生産者 日進牧場(北海道浦河町)▽戦績 13戦7勝(うち地方1戦1勝)▽総収得賞金 2億949万1000円(同1億円)▽馬名の由来 王の剣。兄キングズガードより連想。兄のような活躍を願って。