エリザベス女王杯(G1、芝2200メートル、12日=京都)の最終追い切りが8日、東西トレセンで行われた。注目馬の調教を深掘りする「追い切りの番人」では、大阪の明神理浩記者が、栗東に滞在して調整中の関東馬ブレイディヴェーグ(牝3、宮田)を徹底分析。前走のローズSから約2カ月の間に、自慢の末脚にさらに磨きがかかっていることを関係者の証言と数字からつきとめた。

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ブレイディヴェーグの最終追い切りはルメール騎手が騎乗してCウッド。古馬3勝クラスのノワールドゥジェと併せた。テンに少しかかった以外はスムーズで、6ハロン80秒3-11秒3の好時計を馬なりでマーク(首差先着)。鞍上は「体が大きくなってパワーアップしていますね」とパートナーの進化を口にした。同騎手が感じたパワーアップは前走ローズS時と今回の1週前追いの比較でよりはっきりする。

☆ローズS1週前(9月7日・良馬場Cウッド)6ハロン82秒6-11秒5・馬なり。

☆エリザベス女王杯1週前(11月2日・良馬場Cウッド)6ハロン82秒5-10秒7・馬なり。

どちらも走りやすい時間帯の馬場。全体時計はほぼ同じだが、ラスト1ハロンのはじけ方がまったく違うことをお分かりいただけるだろう。

いくら走りやすいといっても、10秒7はなかなか目にしない数字。9月7日はブレイディより速いラスト1ハロンを記録した馬が11頭いたが、2日のそれは1番時計タイ(併せたノワールドゥジェがいっぱいで10秒7)だった。次に速い上がりを記録した馬は、マイルCS連覇を狙うセリフォスで10秒9(開門直後の走りやすい馬場)。セリフォスもラストの爆発力が武器だから、ブレイディの10秒7はさらに説得力をもつ。全体時計は通ったコースでいくらでも変わるが、調教のラスト1ハロンはそれがない。言ってみれば、直線はうそをつかない!

ルメール騎手の感じた通り、大幅な進化を遂げている。日々の調教に騎乗している佐藤助手は「前走よりたくましくなっていますね。確実に力をつけています。美浦を出る前に獣医師にみてもらったら、心臓もどんどん強くなっていると言っていました」と、2カ月で心身ともに急成長を遂げたと言う。追い切りを見守った宮田師も「前走は夏バテかなと思うほど毛づやがさえず、冬毛が伸びていました。今回は張りがあって体調もいいです」と仕上がりに胸を張った。

前走のローズSは2着とはいえ、ゴール前は勝ったマスクトディーヴァを上回る切れを見せた。それだけのキレ者が直線の長い京都の外回りで脚をためられれば…。02年ファインモーションのキャリア5戦を更新する、キャリア4戦のエリザベス女王杯馬が誕生する。【明神理浩】