今週は牝馬クラシック第1弾・桜花賞(G1、芝1600メートル、7日=阪神)が行なわれる。

チューリップ賞を制して一躍桜花賞候補に躍り出たスウィープフィート(庄野)の強みのひとつは、物おじしない心の強さ。とりわけ生まれた日に起きた事件は、聖心台牧場の渡邉尚典代表(40)の思い出に色濃く残っている。

通常の出産は人間が介助して引っ張り出すが、知らぬ間に産み落とされたようで確かめに行くと「子馬が消えていた。廊下にも、まさかと調べたおなかの中にももちろんいない。あわ食いましたね」。行方不明になった時刻は夜の10~11時頃で辺りは真っ暗闇。車のライトと懐中電灯を頼りに30分探し回り、ようやく馬房から歩いて3~4分ある道路脇に立っている子馬を見つけた。鳴きもせずにたたずんでいたという。

「見つけられて良かった。あんなことは初めて。本当に驚いた。車にでもひかれたら大変だった。母親は鳴いていましたよ」

馬は生まれて1時間前後で立ち上がって母親の乳を吸い、普通はそばを離れない。有名な童謡「おうま」の歌詞でも、いつでもいっしょにぽっくりぽっくりあるく♪と描写される。「自立心があったんだね。親離れもちょっと早かった」。

性格は良く、人間に懐いた。一方で馬に対しては「きついところがあった。反骨心はあるんだけど素直。それが競馬でいい方向に出ているのかもしれない」。

2021年4月5日夜中の大脱走から3年。阪神競馬場では、再び馬群から抜け出す姿が目に浮かぶ。【岡山俊明】

■母ビジュートウショウは良血お買い得500万円で購入

母ビジュートウショウは20年ノーザンファーム繁殖牝馬セールで、渡邉代表が500万円(税抜き)で購入した。11戦1勝と競走馬としては大成できなかったが血筋が良かった(祖母スイープトウショウはG1・3勝)。その時おなかに宿っていたのがスウィープフィート。最高価格7200万円、平均1119万円だったこのセールでは、お買い得と言える。「馬も立派だったし、どうしても欲しかった。2人で競ってもう少し上がるかと思ったが、運が良かった。血統に加えてスワーヴリチャードを受胎しているのも魅力だった」。四白流星で額に大流星の母は見栄えがする。娘は大流星に膝上までハイソックスの左前脚がチャームポイントで、派手なルックスを受け継いだ。

◆聖心台牧場(北海道新ひだか町) 1988年(昭63)創業。繁殖牝馬15頭。主な生産馬は99年カブトヤマ記念(G3)を勝ったテイエムトッキューで、桜花賞ではG1初制覇が懸かる。

◆馬主のYGGオーナーズクラブ福原聡代表(22年1歳サマーセール350万円で落札) スワーヴリチャードは個人的に成功しそうなイメージがあったので、クラブのラインアップにどうしても加えたかった。(ひと声で)落札できたのはラッキーでした。