重賞さえも追い切り代わり! 長距離王決定戦の天皇賞・春(G1、芝3200メートル、28日=京都)の追い切りが24日、東西トレセンで行われた。注目馬の調教を掘り下げる「追い切りの番人」では、大阪本紙の太田尚樹記者が重賞3勝馬テーオーロイヤル(牡6、岡田)を徹底チェック。5カ月間で長距離重賞4戦という近年まれに見る臨戦過程において“たたき上げ”で究極の状態まで高まった。

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たたいて最強馬をつくる-。重賞3勝馬テーオーロイヤルの臨戦過程には、時代の潮流に惑わされない信念を感じる。右後肢の骨折からたたき5戦目。レース間隔はすべて中10週以下だ。特に2戦目からは5カ月間で古馬ステイヤー重賞を皆勤する。しかも0秒6差10着→2馬身半差2着→首差V→5馬身差圧勝と“たたき上げ”でパフォーマンスをアップしてきた。

もしかして前走がピークでは? それは杞憂(きゆう)のようだ。岡田師の声は自信に満ちていた。

「当初の予定通りなので。(阪神大賞典を)とばすと間隔が空きすぎる。復帰からは(調教で)追い込んでない。馬なりに近い調整で、競馬が本追い切りみたいなもの。馬に負担は掛かってないと思う」

昨秋からの調教履歴を振り返ると、ほぼすべての追い切りが馬なりだ。今年に入っての例外は2本。中10週だったダイヤモンドSの2週前にゴール前で軽く仕掛けられ、今回の1週前は直線で手綱を押された。ともに単走でノーステッキ。余力があった。

タフだからこそできる調整法でもある。菱田騎手が挙げる長所は「心肺機能と燃費のいい走り」。調教で息切れしたことがないという。追い切り日以外のメニューも目を引く。今月6日以降は毎週火曜と土曜にCウッド(全長1800メートル)を2周。担当の栗原助手は「この馬には普通。むしろ距離を走るほどリズムが良くなる」と証言する。まさに生粋のステイヤーだ。

最終追い切りでは先行させた2頭に遅れた。それも心配無用だ。馬なりで深追いしておらず、主戦騎手も「先週の時点で整っていた。オーバーワークにならないように。時計(Cウッド6ハロン86秒4-11秒9)も予定通り。内容もとても良かったと思う」と満足を口にした。僚馬の後方でウッドチップを浴び、闘争心を高める狙いもあった。

一昨年はダイヤモンドSから直行して3着に終わった。岡田師は「成長もして2年前とは全然違う。トモの力がしっかりした。一番いい状態で臨めると思う」と胸を張った。出来は究極。帝王の座は目前だ。