「メイショウ」の冠名で知られた馬主・松本好雄氏が8月29日に膵臓がんのため亡くなった。87歳だった。現場記者時代に何度も取材した伊嶋健一郎デスクが希代のオーナーを悼む。
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2016年の5月、ダービーを前にして、松本オーナーに長く取材させていただいたことがある。兵庫県明石市の株式会社きしろへお邪魔して、いろんな話をお聞きした。
松本オーナーの座右の銘は「人がいて、馬がいて、そしてまた人がいる」。それを説明してくださった話は今でも印象に残っている。
「特定の夢のために馬を買ったり、世話してもらうことはありません。絶対に走る馬なんて誰にも分からないですからね。それなら人との付き合いを大事にした方が、結果がどうあれ、いいんじゃないかと思ってやってきました。その方がたくさんの人と喜び合えて、またその喜びも大きいですから。みんなで大きな声を出して応援し、喜び合えるような馬に会いたい。そう思いますね」
僕のようなスポーツ紙のいち記者にも、目をじっと見て、優しく話してくださった。その器の大きさに、多くの関係者もひかれたのだろうと思う。
面白いエピソードもたくさんお持ちで、笑わせていただいたのはメイショウサムソンで06年ダービーを勝った帰りの話。大応援団とともに新幹線に乗り込み、宴会となったそう。
「それはもう、すごかったですよ。車内の電光掲示板に『今年のダービーはメイショウサムソンが優勝』とニュースが流れるたびに、みんながワーッと歓声を上げるんです(笑い)」
想像するだけで楽しそうで、その話をする松本オーナーもまた、楽しそうだった。大企業のトップであり、大オーナーでありながら飾らない。それが“メイショウさん”なのだろう。
JRAに馬主登録されたのは1974年(昭49)。僕が生まれた年だ。馬主歴は実に51年。天国でも競馬を楽しまれるのだと思う。【伊嶋健一郎】

