思い出を塗り替える挑戦の始まりだ-。夏の欧州頂上決戦、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(G1、芝2390メートル)が25日に英国・アスコット競馬場で行われる。連載「キングへの挑戦~Road to Ascot~」最終回は、ヴェルテンベルク(牡6)を管理する宮本博調教師(63)が今回の遠征へかける意気込みを語った。このレースはJRAで馬券発売される。【取材・構成=深田雄智】
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思い出は色あせない。「実は42年前、大学3年の頃かな。イギリスに行ったことがあるんよ」と宮本師は記憶の片隅にある出来事を思い出す。馬術の日英遠征に学生選抜として参加し、留学中の徳仁天皇(当時の浩宮さま)と会食。「忘れもしないよ。一緒にミルクがゆを食べた。その時に“馬場馬術と障害馬術どちらがお好きですか?”と質問していただいてね。馬場馬術が好きですと答えて、そこからたくさんお話しできた」と回想した。
海外競馬は調教助手時代にキョウトシチーで参戦したドバイWC(98年6着)、調教師として臨んだクリンチャーの凱旋門賞(18年17着)に遠征してきた。「世界の大レースに参加できることを誇りに思おうと。周囲の方々に感謝してもしきれない」と思いを述べる。
世界最高峰の舞台にヴェルテンベルクを送り出す。前走の天皇賞・春では12番人気を覆し、クロワデュノールを推定2センチ差まで追い詰めた。日本のファンを驚かせるパフォーマンスだったが、指揮官は「馬を見直したと同時に、信じ切ってあげられず申し訳ないことをしたと思った。あそこまで行ったら勝ちたかった。馬はよく走ってくれた」と悔しさをにじませる。
それでも6歳になって、充実期にあるのは確かで「この馬の成長力は本当に驚かされるね。ここまでの馬をやったことはない」と目を見張る存在。「キタサンブラックの子どもを管理させてもらえるのは喜びがあるし、この馬にもよくお守りが届くんよ」と能力も人気も偉大な父譲りだ。
世界中のホースマンが注目するビッグレース。キングジョージについて「やっぱりすごいレースだと思う。凱旋門賞に挑戦した直後、いつかキングジョージにも行けたらいいな、と。できれば日本でG1を勝って行きたかったけどね」と切望していた。
刻一刻とせまる大舞台。それでも「これまでの海外遠征経験がいい勉強になった。大切なのは人間の平常心。どこに行こうが、どのレースだろうが気持ちは一緒でないとダメ」と淡々と待つ。42年ぶりの訪英は思い出を塗り替える旅路。今度は世界を驚かせてみせる-。(おわり)

