「大腸内視鏡検査」は大腸がんの早期発見には欠かせません。その重要な検査でも、がんと思われる腫瘍性病変の見逃しが、1回の検査で“径5ミリ以下のポリープ(腺腫)で約25%”とも報告されています。径10ミリ以上の、比較的大きめのポリープでも2%です。それを改善するために登場したのが「AI内視鏡」。私見ですが、特に進歩しているのが富士フイルムの「CAD EYE(キャドアイ)」です。数年前までは、「人間が作っているものなので、どうせ人間には及ばない」と私もたかをくくっていました。ところが、CAD EYEはポリープ発見率約95%、腫瘍と非腫瘍の正診率も約95%。今や、トップレベルの大腸内視鏡医とほぼ同レベルです。つまり、経験の少ない大腸内視鏡医でもAI内視鏡を使うと、エキスパートと同レベルの検査ができるということです。では当院でも導入しているCAD EYEの検査を具体的に-。

AI内視鏡を患者さんのお尻から挿入。その画像をモニターで見ます。奥まで挿入した内視鏡をゆっくり抜いてくると、小さなポリープでも四角い枠で囲んで教えてくれます。それを確認して手元のボタンを押すと、そのポリープが腫瘍性ポリープであれば黄色の縁取りとなり、非腫瘍性ポリープであれば緑色の縁取りになります。これがAIの判断です。組織検査をしなくても、AIが黄色で腫瘍性と判断すると“切除も検討”、緑色で非腫瘍性と判断すると“切除不要”ということになります。緑色であれば“切除不要”なので、次回の内視鏡検査は3年後で良いことになります。

このほかにも、CAD EYEは人間が容易に見つけられないような腫瘍もしばしば見つけてくれます。たとえば、中堅の内視鏡医でも見逃しかねない3ミリ程度の少しくぼんだ腫瘍も発見します。いや、ベテランの内視鏡医でも朝から大腸内視鏡検査を10人程度行っていると疲れてきます。そのタイミングで、小さなくぼんだ腫瘍があると見過ごしてしまうでしょう。しかし、AIは疲れることなく、同じ精度で腫瘍を四角で囲んで教えます。AI内視鏡で腫瘍を見逃される人が少なくなれば、明日が明るくなります。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)