阪神が早くも昨季を上回る今季12度目の完封負けを喫した。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)は代打銀次に勝敗を託した楽天と比較して、虎打線から「得点を奪う形」が見えてこない現状を憂慮。近本、大山、佐藤輝、中野の打順固定からの1日も早い得点パターン確立を提言した。【聞き手=佐井陽介】

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阪神は得点を奪う形が見えてこないのが気がかりです。7回裏無死二塁では後続の3人が凡退。走者を三塁に進めることすらできませんでした。たとえアウトになっても、2死までに三塁に進められれば、相手に「失策や暴投はできない」と重圧をかけられます。それでボール1個分でも投球が浮けば、安打の確率が上がります。次の打者を楽にさせる作業がもっと必要です。

0-0の8回裏には1死から出塁した8番長坂選手が代走を送られず、2死二塁からの左前打でホームタッチアウトとなりました。その直前、1死一塁から北條選手が犠打を決めた打席では、結果ファウルにはなりましたが、1度バスターエンドランを仕掛けています。空振りの可能性もあるランエンドヒットを仕掛けるのであれば、先に植田選手や熊谷選手といった足のスペシャリストを投入しても良かったのではないかと考えます。

一方の楽天には0-0のまま迎えた9回表、確かな「形」が見えました。2死二塁で8番炭谷選手が二遊間を破った場面、三塁コーチャーは走者の渡辺佳明選手をギリギリでストップさせて一、三塁にしています。手を回して勝負させてもおかしくなかったケース。とっておきの代打といえる銀次選手が次打者として準備していたから、無理をさせなかったのだと思います。好機をつくって、銀次選手に託す。チーム全体で「形」を共有できている点に、パ・リーグ首位チームの強さを感じました。

阪神はこの日、負傷離脱したマルテ選手に代わって大山選手を3番起用しました。ただ、大山選手は4番佐藤輝明選手の後ろで状態を上げ始めたところ。大山選手は5番のまま、他の選手を3番に入れる手もあったのではないでしょうか。1日も早く得点パターンを確立するためには、主力である近本選手、大山選手、中野選手、佐藤輝明選手の打順固定が早道だと考えます。

打者には1人1人特徴があります。初球からガンガン振りに行くタイプがいれば、じっくり待つタイプもいます。打球の質も人それぞれです。打順が固定されれば、後ろの打者の特徴を踏まえた上での的確な打球判断、スタートがより可能となります。何より「こういう流れを作れば得点できる」というパターンをイメージしやすくなります。

幸い、投手に関しては7、8、9回の勝ちパターンが形になりつつあります。次は打線です。四球や犠打、進塁打からノーヒットで得点するスタイルも1つ。「走る走る」と揺さぶって、相手バッテリーを崩すのも1つ。4番佐藤輝明選手に警戒を集めて四球を選ばせた後、5番大山選手で点を取るのも1つ。今は各打者が安打を打つしか手がないように感じます。一刻も早く22年阪神打線の「形」を作る必要があります。

次戦の相手はロッテ佐々木朗希投手。簡単に打ち崩せない投手だからこそ、チーム全体で「形」を共有するチャンスでもあります。コツコツ走者を進めるのか、粘るのか、足を使うのか。球界屈指の好投手との対戦に注目したいと思います。(日刊スポーツ評論家)