左肘手術を乗り越え、中日小笠原が6月2日の楽天戦で復活星を挙げた。人生初の手術で不安ばかりの中、大きくなって帰りたいと志す姿が印象的だった。

 取り組みの一例として、翌日の紙面で紹介したのが、寮で始めたミニトマトの栽培。「何か1つ、継続してできることをやりたい」。聞き慣れた言葉だが、トマト栽培という意外すぎる発想がなんとも面白かった。幼少期に父仁さんが育てていた記憶があったから、とのこと。

 選手としての魅力はもちろん、人柄も広く知ってほしい担当記者としては、もし当日紙面のスペースが許せばミニトマトより「余談」の方を書きたかった。実はほかにもう1袋、種を買ってきていた。「スイカ」と聞いて仰天した。

 彼はスイカがなる様子を想像できていなかったようだ。球団関係者に「さすがに無理だろ」とすぐ突っ込まれた。「あはは。植える場所がありませんでした。球場のグラウンドの一部を買い取って、そこで育てようかな」と豪快に笑い、こちらも腹を抱えた。

 かくいう記者も、もしかしたら家庭向けの簡単な方法があるのでは…と不安になり検索してみた。やはり種からだと難易度が高く、場所も必要になるようだ。ホッとしつつ、うれしそうに話す小笠原の顔を思い出してニヤけてしまった。

 小笠原は始終、こんな感じである。物ごとに人一倍のこだわりがあるが、細かすぎず屈託がない。体形もスイカのよう(?)でいて、中身は果肉、いや筋肉でパンパンになってきた。幻のスイカに代わって、中身の詰まった充実の夏にしてほしい。

【中日担当=柏原誠】