中日は「育成できる球団」になれるのか。新たな挑戦に注目している。

 スカウトなど編成部門の社員がコーチに。逆に、現コーチが編成部門に移る「トレード」を今オフに複数件、実施する。森監督が就任以来掲げていた「公約」を果たす格好だ。組織全体で選手を育て上げるサイクルを目指す。

 5年連続Bクラス。低迷を招いた原因の1つが、球団内に横たわる「プロアマ問題」ではないか。ある球団関係者は「この数年はスカウトと現場が話し合うことがほとんどない」と明かす。人材を供給するスカウトと、あずかる現場が“分断”。外部招へいのコーチが多い時代が長く続き、生え抜きばかりのスカウト陣との間に距離ができた。

 スカウトは選手の未来像を思い浮かべて獲得してくる。一方、外から来たコーチは概して短期的な結果をほしがる。本来は選手の数だけ指導アプローチがあるべきだが、すり合わせがなおざりになった。

 そのせいもあってか、中日には育成フォーマットが存在しない。たとえば近年は複数球団がA選手には年間○打席、B投手には年間○イニングなど、具体的なプレー機会を決めている。各選手の成長度合いを先に想定し、向こう数年のドラフト戦略に生かすパターンを作っている。

 中日の球団幹部は「うちは高卒1年目の選手でも、1軍で使えるレベルになれば使う。選手を見ながら判断する」と話す。先日行われた早実・清宮との面談後、中田スカウト部長が育成プランについて「具体的なことはない。出てくる選手は自力で上がってくる」と語っている。

 もちろん1つのやり方ではあるが、重要なのは全体でプランを共有すること。今回の「トレード」には、その問題を解消する狙いがある。26日のドラフト指名の顔ぶれも含め、変化を追いかけてみたい。【中日担当=柏原誠】