4回裏広島2死一、二塁、菊池涼介から左前適時打を浴びた岩貞祐太の下に集まる阪神内野陣(2019年4月6日撮影)
4回裏広島2死一、二塁、菊池涼介から左前適時打を浴びた岩貞祐太の下に集まる阪神内野陣(2019年4月6日撮影)

野球記者として戒めていることがある。結果論でモノを語るな。勝敗やプレーの成否に強く引きずられるあまり、とかく表面をなぞっただけの薄っぺらい伝え方に陥りがちになる。1歩、立ち止まって考える。物事には表があれば裏もある。それほど単純ではない。

見過ごされがちなシーンが気になった。阪神は4月6日に広島とマツダスタジアムで対戦。0-3で迎えた4回裏2死一、二塁だ。菊池涼が打席へ。次の1点で勝負の流れが決まる。そんな局面だった。巧打者の菊池涼-。当然、外野は前進してバックホーム体制…かと思いきや、ほぼ定位置だった。カウント2-1からの4球目を打たれた。皮肉にも、ゴロは三遊間を破って左前へ。だが二塁走者も楽々生還。阪神は大敗した。

もちろん、前進守備も選択肢の1つだった。守備位置の指示を出す筒井外野守備走塁コーチは「あれが2ストライクだったら、外野を前進させる手もあったと思います。まだ4回だったから…」と振り返る。筒井コーチら三塁ベンチが、あらゆる可能性を踏まえた上で決断した守備陣形だった。「まだ4回だったから、ドッシリと構え、前進守備できゅうきゅうとしたくない。菊池は巧打者だが、前の試合も左翼線二塁打も打って、長打を警戒すべき。外野の間を抜かれたら致命的な2点を失う…」との説明だ。

前進守備を敷かず、痛恨の1点を奪われた事実をことさら伝えるより、外野守備担当コーチが考え抜いた“痕跡”を知ることの方が深みがある。「結果」は、ただそこにあるだけ。その是非をうんぬんするより、決断の背景に迫る。そこに人間臭さがあるし、取材する妙味があると思う。【阪神担当 酒井俊作】