<日本生命セ・パ交流戦:ヤクルト5-6ソフトバンク>◇20日◇神宮

プロ野球の「捕手」とは因果な商売である。ボヤキで有名なノムさんことホークスOBでもある野村克也氏がいつもボヤいているが、勝てば投手、負ければ捕手…。この構図はほとんど昔と変わっていないのではないだろうか。

練習でも試合でも彼らの労働量は多い。打撃、守備練習に加えてブルペンでは投手の球を受けなければならない。試合では投球ごとに座っては立ち、ベースカバーにも走れば、サインプレー…。動くだけならまだしも、常に頭を使い続けなければならないから、心身の疲労は大きかろう。

「正捕手」として独り立ちを求められているソフトバンク甲斐もV奪回のめに試練の日々を送っている。この日は打撃好調もあって今季2度目の6番で先発出場。2回、5回にそれぞれ中前打、左前打を放って気を吐いた。今季はすでに自己最多に並ぶ7本塁打も放っている。課題の打撃に大きな成長を見せている。「1日が長いです。ずっと野球のことを考えているので」。毎夜のように見る夢もほとんどが野球。自分が活躍した夢ではなく、ほぼすべてが打たれた場面や、ミスを犯した場面という。この家業、気の休まる時はない。

吉鶴バッテリーコーチは正捕手の絶対条件に、技術的な面は当然ながら「体の強さ」「洞察力」「目配り」「気配り」を挙げる。あらためて思うが、捕手は克服しなければならない課題が多い。

この日、9回裏の守備はベテラン高谷がマスクをかぶった。新人甲斐野が3人で片付け、初セーブを手にした。甲斐にはまだまだ乗り越えていかなければならないものがあるのだろう。試合後の甲斐に笑顔はなかった。この悔しさをさらなる力に変えてもらいたい。【ソフトバンク担当 佐竹英治】