勝つために声を出す。オリックス大下誠一郎外野手(23)は今オフの契約交渉で、倍増の推定年俸840万円でサインした。
「自分を評価してくださって、素直にうれしかった。(育成で入団して)毎日苦しかったですけど、はい上がってやろうと。今までやってきたことは間違いではなかった」
19年育成ドラフト6位で入団。練習熱心で毎日、日が暮れるまでバットを振り続けたムードメーカーは、9月14日に支配下選手登録されると、翌15日の楽天戦で育成出身者としては史上初となるプロ初打席初本塁打というド派手なデビューを飾った。
チームを盛り上げようとベンチで声を張り上げる姿も話題になった。試合後には喉がかれ、中嶋監督からあめを手渡され「これ、食えよ」とケアを促されるほどだ。それでも大下が「最初、おとなしいなと思いましたね」と振り返るオリックスのベンチは、自身の声もあって少しずつ変わっていった。
1軍定着を狙っていた10月某日、球団寮の大下宛てに蜂蜜・マヌカハニーを販売する会社から、瓶詰めの蜂蜜が届いた。ベンチ内で盛り上げ役に徹する姿を見たファンがSNSを通じて「大下選手に贈ってほしい」と同社にリクエストしたもので、大下は「結構、効きますよ。ありがたいです」と愛食中。就寝前にひと口パクリとして、喉のメンテナンスに役立てている。
今季は新型コロナウイルスの影響もあり、ファンは観戦したくても、球場に足を運べない日々が続いた。それでも、SNS上の「ファンの声」が、大下のベンチでの声につながったことに、なんだか胸がホッとした。【オリックス担当 真柴健】