野球の国から

阿部慎之助の探究心 世界行脚でさらに感性磨く

<阿部慎之助がいた風景(3)>

自分を信じ、自分を疑う。巨人を引退した阿部慎之助捕手(40)は、実績に執着することを嫌い、常に新しい視点や方法論を模索する。原動力は探求心。2軍監督として第2の野球人生をスタートしたばかりだが、早速カリブ海への視察を敢行する。

17年2月、宮崎キャンプ休日に「真名井の滝」を訪れる阿部
17年2月、宮崎キャンプ休日に「真名井の滝」を訪れる阿部

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長時間の連続使用が可能なワイヤレスイヤホンを購入し、阿部が言った。「移動時間が長いから」。

国内外のアーティストの曲を聴き、海外ドラマの流行にも乗り遅れない。トレンドに敏感に反応する一方で、近年は歴史にも興味を示す。宮崎キャンプでは「神々のふるさと」と言い伝えられている高千穂峡に足を運び、沖縄キャンプでは「ひめゆりの塔」で悲惨な過去を直視した。

「野球しかやってこなかったから。いろんなものを見て、いろんなことを感じたいと思った。その土地、その時代の人たちの思いとか考え方がある」

元来が好奇心の塊。五感で得られる感性を、とことんまでに突き詰めてセカンドキャリアにも生かす。

引退を決めた直後、球団から世界行脚の打診を受けた。ドミニカ共和国でのトライアウト。プエルトリコ、台湾でのウインターリーグ。「もちろん、即答だった。ずっと見てみたいと思っていた。メジャーで、中南米出身の選手がすごく活躍している。どうやったら彼らのようなスーパースターが生まれるのか? 子どものころ、どんな練習をしているのか?」と熱っぽく語った。

プレーだけを視察するのではない。「野球のある風景」に行脚の目的がある。

ドミニカ共和国では英雄ロビンソン・カノの練習施設も見学する予定。父がアカデミーを運営し、オフ期間はカノが専用球場でトレーニングを行っているという。「日本とはスケールが違う。まったく想像がつかない」とやや困惑するも、好奇心がはるかに上回っている。

小学生から高校生年代の指導方法は、かねての関心事だった。「日本ではゴロは『正面に入って捕れ』と教えられる。プロになって、本当にそれが正解なのかと思うことは多々ある。グラブさばきは圧倒的に外国人の方がうまい」。

指導のからくりは、実際の自分の目で見て確認しなければ分からない。「道具、練習時間、練習メニュー、生活スタイル、食事。すべてが野球に関係していると思う。行ってみないと分からないことはたくさんある」。頼りにするのは、やはり五感だ。

現役時代は外国人選手とのコミュニケーションを重んじてきた。今季も1、2軍を行き来するゲレーロに「軽打をするために日本に来たのか? どでかいのを狙って、打ってこい!」と背中を押した。メキシコ出身のビヤヌエバには「音楽と一緒。バッティングにはリズムが必要。固まるな」。力む傾向が強かったマシソンには八の字を示し「8割の力で十分だ」と諭した。

助っ人にとっては金言だったが、歩み寄ったのは好奇心を源とした本能でもあった。「やっぱり、それぞれ違う国で生まれて、育って、練習をして同じ野球をやってきたというところに、単純に自分も興味があったってことだと思うよ」。

原監督はそんな阿部の姿勢が好きだ。「目から入るものでも、手からでもいい、五感でもいいんだけど、何でもいい。それが財産になる。土産話というか、それが経験になって、選手たちの教育論になる。経験しないとダメ。やっぱり強いですよ。無駄なことはない」と後押しした。

日本からのドミニカ共和国までの飛行時間は20時間を超える。米ニューヨークを経由して2度の乗り継ぎが一般的。「選手の時よりも忙しくなると思う。でも行ってみないと分かんないから。いろんな体験、経験をしたい」。カリブ海に浮かぶ野球大国に宝物を探しに行く。(つづく)【為田聡史】

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