東京オリンピック(五輪)が延期になるという衝撃的なニュースは24日夜、遠征先である横浜市内のホテルで知りました。

83歳になる母親は新型コロナウイルスによる昨今の状況を「なんか戦争のときみたいやな」と憂いています。実際、いま歴史的な経験をしているのかと思うと、おそろしい気がします。

さて五輪延期決定により、4月24日の開幕を目指しているプロ野球は五輪で予定していた中断期間も試合が可能になり、日程的にはラクになったようです。しかし目に見えないウイルスが相手だけに、どうなるかは予断を許しません。

そんな中、五輪野球について少し書きたいと思います。まったくの私見です。

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五輪期間にペナントレースを中断すると聞いたときは少々、不思議に思いました。「プロ野球そのものを休むの? 過去は五輪のときはやっていたのに?」という思いでした。

球界関係者にその話をすると「今回は東京、自国開催だから仕方ないでしょう」と言われました。確かに神宮球場、横浜スタジアムを使えないなどという理由もありますが、何より、国全体としての盛り上がりという面に配慮したということでしょう。

それでもプロ野球は、なんだかんだ言っても、いまだ国民的な娯楽だと思います。はっきり言えば、関西の人々にとっては阪神の結果が五輪同様に重要ですし、福岡の人がホークスに対する気持ちも同じだと思います。

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しかし、確かに自国での五輪野球を戦っているときに横でペナントレースをやっているのも、特に出場している選手、さらに個々のひいきチームを持つファンからすれば、なんとも言えない気持ちになるかもしれません。

そこで、あらためて思うのが、賛否はあると思いますが五輪野球はアマチュア中心に臨む方がいいのではないか? という考えです。

これは何も新しい意見ではありません。「五輪はアマチュア選手でやるのがいいのでは、と思います。プロにはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)があるのですし」。こういう考えを聞いたのは、あのイチロー氏からです。

北京五輪・野球代表の監督を務めた星野仙一氏も生前、「五輪はアマに返した方がいいと思うな」と話していました。他の人々からも同様の意見は過去に発信されています。

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現在の「侍ジャパン」はオール・プロです。これを社会人、大学生のアマチュア中心にする。そうなればアマでプレーする選手にとっては最高の舞台ができることになります。実際にかつてはそうでした。

しかし、それではやはり勝てない、メダルに届かないということでプロ選手が参加するようになった歴史も理解しています。

それでも米大リーグにおいてはロースター入りしている選手が五輪の野球に出場できないルールもあります。それなら日本も「ウチはアマ最高の選手でやる」という方針を打ち出しても悪くないと思います。

プロ選手を出すにしても1球団2人までとか、プロ経験は3年までとか、決めごとをつくれば公平性も保て、さらにプロ・アマ混合チーム独特の魅力もあるかもしれません。

さらに言えば、そこから日本野球の課題であるプロとアマの問題が良くなることも期待できるのではないでしょうか。

例えば甲子園に出られなかったプロ注目のエースが社会人、大学生をバックに五輪で投げ、キューバの強打者から空振りを取るなどというシーンが想像すればゾクゾクします。

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根本的に言えばサッカーがそうであるように、野球も単一競技の大会に最高の権威を持たせるべきだと思います。サッカーにおいては出場は23歳以下という制限をかけている五輪よりもW杯の方が重要視されています。

そもそも現状、五輪野球は東京大会を最後に除外されていますし、オリンピックの側から競技としてさほど重視されていない現実があります。

そう考えれば野球にとっては、さまざまな問題はあっても、やはり現状のWBC、あるいはそのレベルの大会を充実させていくことが大事だと思います。来年には第5回WBCが予定されています。

さらに言えば将来的には大リーグのチャンピオンと日本シリーズを制した球団との「リアル・ワールド・シリーズ」の実現が日本プロ野球にとっては究極の目標でしょう。

そんなことを考えると「五輪野球はアマで勝負!」とする方がいいのではと思えて仕方がありません。

野球の裾野を広げ、競技はもちろん、「こんないい選手がいたんだ」とアマ野球に魅力を持たせる面でも有効ではと思うのです。

08年、北京五輪野球3位決定戦で唇を噛む星野仙一監督
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