お金の話が続くオフ、いいなあと思う広島カープの話題2つです。カープは8日に広島市、キャンプを行う宮崎・日南市、沖縄市など関係の深い自治体に計5億7000万円を寄付すると発表しました。

3年ぶりに入場制限なしでシーズンを送れたことに加え、今年3月に大リーグ・カブスに移籍した鈴木誠也外野手のポスティングシステム譲渡金として約16億8000万円(当時のレート)が入ったこともあってため、普段の感謝を形に変えたといいます。

簡単に寄付と言いますがなかなか大変なこと。一般的には「それで選手補強を」という発想になるかもしれませんがカープは基本、FA補強はしないし、外国人選手も独自の視点で獲得するなど金銭にモノを言わせて選手強化するチームではありません。「市民球団」という理念もあり、こういう行為になったよう。

さらにこの日、契約更改した会沢翼捕手の態度に感服させられました。4000万円ダウンの年俸1億4000万円での単年契約を結んだのですが、その金額を公表したことです。

現在、労働組合・日本プロ野球選手会は年俸非公開を希望する選手について、そこに触れないようメディアに要望しています。

これにはいろいろ理由があります。その1つを簡単に表現すれば「本人はよくても近親者が迷惑する」ということでしょう。

たしかに市民感覚として、その家のダンナさん、あるいは奥さまの給料がいくら…というのを世の中の人がみんな知っているというのは妙なことでしょう。だから一部の選手がそういう気持ちを持つことも分かります。

そして会沢選手はその選手会会長。非公開を要望している会長自身が公表と言うのは矛盾するような気もします。それでも同選手は「あれは個人の自由。それもプロ野球の1つの仕事だと思うので」と取材に答えています。

プロ野球という興行に参加する選手が、その存在を示す年俸を明かすというのは、それ自体が興味を引くものですし、メディアにとってニュースなのも事実。それこそ彼の言うように公表するかどうかは個人の自由ですが、その態度に「プロの覚悟」のようなものを感じるのは否定しません。

今の世の中、そういう表現はダメかもしれませんが会沢選手は「昭和の男」をほうふつさせる、さっぱりした人物。実に彼らしいな、と思ったものです。

オリックス・バファローズの日本一に貢献した主砲・吉田正尚選手が大リーグ・レッドソックスに5年総額9000万ドル(約126億円)で移籍というニュースはその高額さに驚きましたが、広島のこういうお金の話もなんだかいいなあと思うのです。【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「高原のねごと」)

レッドソックスと5年契約で合意したオリックス吉田正尚はフリー打撃を行った(2022年12月8日撮影)
レッドソックスと5年契約で合意したオリックス吉田正尚はフリー打撃を行った(2022年12月8日撮影)