ソフトバンクから移籍したDeNA尾形崇斗投手(27)のピッチングを見て、今後への確かな手応えと、一抹の不安をしっかり分析した。
◇ ◇ ◇
先発して6回86球を投げて無失点。1安打、10奪三振での四球2。申し分ない。それに内容もあった。やはり、ソフトバンクからトレードで移籍してきた尾形にしろ、井上朋也にしろ、ここ横須賀、あるいは横浜スタジアムで絶対に結果を残すんだ、という強い決意がプレーに感じられた。
尾形は真っすぐとスライダーに非常に高い能力がうかがえた。まず、土台となる真っすぐはMAX156キロで、全球150キロ超えで、安定してボールに勢いがあった。とてもいい。ただ速い、ただキレがある、そういうことではなくて、狙ったところに意図したボールを投げていた。それで、球速も、ボールに強さもあった。
三振10個のうち、真っすぐで奪った三振は4。左打者の内角へ154キロで空振り三振。ファームとはいえ打者は完全に差し込まれていた。奪うべくして奪う空振りといえる。左打者のインローへしっかり制球して見逃し三振。これも、打者がバットを出したとしても、何とか当ててもファウルというコース。空振りも十分に奪えるボールだった。
右打者のアウトコースへ投げて見逃し三振。手が出なかったといえるだろう。4個目は、右打者の真ん中高めに155キロ。これも打者が力負けして空振り三振。真っすぐが好調という印象を受けたが、特定のコースだけに頼らず、左打者の同じ内角でも、真ん中付近と、低めへ、右打者も外角で見逃しと、真ん中高めで空振りと、丁寧にコースも高低もしっかり投げ分けていた。
こういうところに、結果だけでなく、1軍での登板を視野に入れた高い問題意識が感じられる。そして、スライダーが素晴らしかった。スライダーでも4個の三振を奪っている。左打者の外角から曲げて奪った見逃し三振。右打者の外角へストライクからボールになる制球で空振り三振を2個。見逃し三振を1個。
スライダーでは、カウント球としても、こうした空振りを念頭に置いた勝負球としても十分に通用することを実戦で証明した、そういう印象を受けた。試合でスライダーを20球投げているが、ボールは3球のみ。好調なスライダーを理想的な使い方で有効に機能させている。
この真っすぐと、スライダーが尾形の生命線になる。このポテンシャルで1軍でもある程度の活躍は十分に期待できる。それを確信したピッチングだった。いいところは随所にあったが、だからと言って、すべてが満点かと言われれば、そんなことはない。まだまだ改善の余地はある。
カーブと、フォークには不安が残る。まず、カーブ。119キロほどで、抜け感はある。つまり、真っすぐとの組み合わせで緩急への武器になるボールだ。だが、制球出来ていない。初球に使っていたが、明らかなボール球で見送られている。それではこのカーブの使い道が半減してしまう。
尾形の真っすぐと、スライダーがあるならば、いや、あるからこそ、初球でポンとカーブでストライクが取れると非常に大きい。バッテリーとしてはカーブで安定してストライクが取れると、かなりのアドバンテージになる。なぜなら、緩いカーブを見せストライク先行でカウント有利で進めることで、最後の勝負球の真っすぐ、スライダーがより生きてくるからだ。
だから、初球でカーブを使うならば、ストライクは必須。せっかく打者に見せるのだ、ここで確実にカウント球として生かさないと、逆に初球カーブが見送られてボールになっては、その意味がなくなる。むしろ、カウント負けして自分の首を絞める。
使うなら、しっかり低めに、かつゾーンに投げないと。むろん尾形も分かっているはずだ。ただし、より自分に強く制球を課さないで、この日の精度で1軍で使ったならば、痛い思いをする可能性をはらむ。低すぎて見送られてカウント負けするならまだいい。何とかストライクをと、甘く浮いたら格好の餌食。長打になりやすい、この特性をしっかり頭の中で整理して、制球をつける作業を継続してほしい。
そしてフォークだ。この日はたまたまフォークとカーブの制球が今ひとつだった可能性はあるかもしれない。そこを1試合で判断するのは早計だが、この試合を参考として指摘させてもらう。フォークは低すぎてバットが止まっている。いわゆるボールからボールへのフォークは、カウント球としても、勝負球としても使えない。
扱えるか、扱えないか。フォーク、カーブはそこが分かれ目になる。どちらも低めにコントロールすることが大切になるのだが、低めを意識することで低すぎると打者は反応しない。かといって、低くなりすぎないように意識すると、長打を浴びる危険なボールになりかねない。この加減にどの投手も悩むのだ。
尾形にはいい真っすぐ、変化量のあるスライダーがある。この武器を使うため、カーブ、フォークを投げて投げて、感覚を身につけてもらいたい。それが結局は尾形自身を助けるのだ。いいからといって、真っすぐ、スライダーの2球種で勝負することは1軍では現実的ではない。
1軍の主力クラスならば、どちらかに狙いを定めて振ってくる。そうなると、狙いが当たれば、十分にヒットゾーンに弾き返される。そうなると、苦しくなる。たとえば、そうしたケースを想定していれば、いかにカーブ、フォークの必要性があるのか、よく理解できるはずだ。
最後に、尾形は2度盗塁を仕掛けられて、いずれもアウトにはなったが、私の目には際どかった。私の計測では尾形のクイックは1・28~29。ちょっと遅いか。尾形のフォームはテークバックを取ることがあり、それが少し大きいため、それでほんのわずかでも時間がかかる。
目安としては投球が真っすぐだとして、合格ラインは1・24。ここを目指して、よりクイックの完成度を磨いてほしい。こういうところで、本来のピッチングのリズムを崩すのは大変もったいない。特に、カーブの制球が改善された時、カーブはよりクイックでのタイムが厳しくなる。今のうちからそこは留意してほしい。(日刊スポーツ評論家)





