関西学生野球秋季リーグで8日、京大が関学大を4-0で下し、14年秋以来の勝ち点を挙げた。

5年ぶりの勝ち点。京大・西拓樹主将とこの試合で先発しリーグ戦初勝利を挙げた仲村友介投手(ともに4年=西京)にとっては、それ以上に意味のある1勝になった。

2人は高校からの同級生。大学入学後、西はもちろん野球部への入部を決めていた。それとは対照的に仲村は「ボート部とか、他の部活もいいかなと」と新ジャンルへ目移り。そんな仲村を西が説得。熱心な勧誘の末、リーグ戦が既に始まっていた4月の終わり、仲村も入部した。

2年冬、仲村に暗雲が垂れこめる。右肩に異変を感じ、病院で検査を受けると関節唇の損傷と診断された。手術を避け、対症療法を決断。今現在も20~30球の塁間キャッチボールで調整を続ける日々だ。それでも元ソフトバンクの近田怜王コーチも「使わないともったいない」と認める能力の高さ、状態の良さを買われ今回の先発に抜てきリーグ戦登板は3度目。経験値も浅かった。だが、大学最長となる6イニングを4安打7奪三振で無失点。90球を投げきった。仲村は「要所で三振が取れた。本当にうれしい気持ちです。腐らずに準備を続けてきました」。リーグ戦初白星が、10季ぶりの勝ち点を生み出した。苦労人が紛れもなく、勝利の立役者になった。

西の目はどんどん赤くなった。「6回投げてくれて。あいつ(仲村)もケガがあって。短いイニング、連投もできない縛りの中、苦しみがある中で勝ち点かかった試合で投げて…」。球友を思うたび声は詰まった。高校からの長年の仲。抱えるつらさは知っていた。「勧誘したのは僕ですが、最後持って行かれてしまいました」。おどけた口調に球友を祝う気持ちを精いっぱい詰め込んだ。

私生活では、西は工学部で金属の組成力学を、仲村は農学部で植物について学ぶ理系男子。来春はともに大学院に進学予定で、野球はこの秋で辞める予定。残すは13日から始まる同大戦。「最下位脱出は小さい目標かもしれないけど、僕らにとっては大きな目標」。西の言葉に決意の固さがにじむ。00年秋以来の最下位脱出へ。野球人生のラストを絶対に笑顔で飾る。【望月千草】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

リーグ戦初勝利を挙げた京大・仲村
リーグ戦初勝利を挙げた京大・仲村
先制弾を放つなど、2安打3打点の活躍をした京大・西
先制弾を放つなど、2安打3打点の活躍をした京大・西