あいにくの天候で試合は7回途中で終わってしまったが甲子園球場に足を運んだ4524人の観客、その多くを占めるであろう虎党はなかなか満足したのではないか。大物ルーキー佐藤輝明の1発、そして開幕投手に決まってから初めて登板した藤浪晋太郎の姿。結構、ぜいたくな試合になったと思っている。
そんな中、こんな姿を開幕戦でも見せてほしいと思う場面が4回にあった。1点を追う阪神の攻撃。西武の開幕投手・高橋光成に対し、まず先頭のベテラン糸井嘉男が四球を選んだ。続く梅野隆太郎はうまい右前打で無死一、二塁の好機をつくった。
9番木浪聖也は投ゴロ。それでも懸命に走って二塁から転送される間に一塁セーフ。1死一、三塁で代打・高山俊が出てきた。好調ながらスタメンではなかった高山。快打を残したかっただろうが変化球を引っ掛け、二ゴロとなった。それでも懸命に走って一塁に生きた。これで三塁走者の糸井が生還し、同点。2度の“併殺崩れ”が得点に結びついたということだ。
阪神はこのオープン戦、1発攻勢が目立つ。この日も佐藤輝の他にマルテにソロが出た。本塁打は「野球の華」だし、見ていて気持ちがいい。だがそれだけでは長いシーズンを勝ち抜くことはできないと思う。いつもいつも打てるはずもない。本塁打、適時打がなくても得点できる攻撃がしぶといチームには必要だ。
指揮官・矢野燿大が理想とする野球は、例えば「1点を守り切る野球」とか「打線で圧倒する戦い」など具体的なことではなく、メンタルを重視するものだ。今年のキャンプで広島の3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)と対談した際にも言っていた。
「当たり前のことなんやけど諦めないということをずっと言ってきている。凡打のときに一塁までどれだけ走れるか。投手やったら打たれた後にベースカバーにどこまで行けるか。あかんときにどれだけできるか。そういう諦めない力をつけていこうっていう話はずっとしている」
単なる精神論ではないのだろう。諦めないことが次につながると考えている。人生において、ときには「諦めが肝心」という部分はあるけれど野球はそうではない。開幕投手・藤浪に黒星がついていれば、やはり少しケチがついた気もする。いい1点だった。こんな戦いを続けてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




