激戦の緊張感を十分に感じながらも面白いな、と思ったのは4回だった。無死一塁から木浪聖也が犠打を決め、ベンチに戻った瞬間。佐藤輝明が両手を広げて迎え、中野拓夢も笑顔を浮かべながら声をかけた。当たり前の光景だろう。だが、それ以上の“意味”も感じた。言うまでもない前日のことがあったからだ。
接戦を落とした24日。1点を追う7回無死一、二塁で木浪は犠打を決められなかった。木浪の犠打失敗は、今季、それが初めてだったが指揮官・岡田彰布は厳しかった。「バントだけやんか。それだけ。そういうことやんか」。試合後、虎番キャップたちに囲まれてもそれ以外の言葉はほとんど発せず、球場を後にしたのである。
問題は打てない打線全体にもあっただろうし、正直、バント失敗だけが敗因とは思わない。だが試合をコツコツ組み立てていきたい岡田にしては許せなかったのだろう。
木浪も悔しく、情けない思いの夜を迎えたはず。だが言えるのはそういう思いを、今季は多くの選手がしているということだ。現状のクリーンアップ3人も坂本誠志郎も、試合後に酷評されるだけでなく、2軍落ちまでしている。
敵将・新井貴浩ならそういう感じでは言わなかったと思う。相手がよかった。負けたらこちらの責任。そんな風に言っただろう。「ミスして責められたことは1度もない」と、ある選手も言っていた。いわゆる今風なスタイル。球界だけでなく今の世の中の主流かもしれない。
それに比べれば岡田は違う。失敗すれば厳しく指摘。機嫌も悪くなる。選手もチーン…という感じだ。だが不思議というか面白いというか「チームが1つになる」という結果においては同じような気がする。厳しい上司の下で、部下が結束する懐かしい形なのだ。
岡田は選手にも、ファンにも特に好かれようとはしていない。勝負に徹し、選手各自に役目を与え、それを遂行させるだけ。それがチームのためと思うからだ。選手にすれば気分よくプレーしたいと思うのは当然だが、もとより、みなプロ。岡田の言動の意味は分かっているはずだ。
強い広島を相手に2点差を逆転した、いい試合だ。反発力、必死さをナインに感じた。相当に不利なのは言うまでもないが、もう少し、楽しませてもらえそうな気がする。(敬称略)
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




