「懸念」が形になって表れたのは7回表か。阪神の4点リード。投手は今季、無双状態の高橋遥人だ。これはすぐにジェット風船の時間…。そう思っていたら先頭の平良竜哉から4連打を浴び、1失点。勝敗にはあまり関係なかったが高橋にすれば、少し驚くシーンだったかもしれない。

「あれと関係あるのか」と思ったのはその直前、6回裏の攻撃中だ。3番の森下翔太に打順がまわったところで代打・嶋村麟士朗が出た。熊谷敬宥、立石正広の適時打で2点を追加し、押せ押せムードだったので虎党も虚をつかれた感じか。普段なら「え~っ?」という大きな声が起こりそうな甲子園だが、それほどでもなかったのである。

森下は5回、右腕に死球を受けていた。一瞬、当たったのがバットか腕か、球審・須山祐多が判断できず、森下が懸命にアピールした結果。だが状態がよくなかったのか。試合途中で退くことになった。

それが高橋の投球に影響したということはないと思うが、そんな気はしたのだ。万が一「森下離脱」などということになれば、それこそチームにとって計り知れないダメージだからだ。

その森下は地味に試合を動かした。4回、先頭で打席に入るとそこまで好投を続けていた岸孝之から四球を選んだ。アウトローを丁寧に攻める岸。そこをフルカウントの6球目を見極めたのである。

その後、佐藤輝明、大山悠輔が倒れ、2死一塁に。そこで打者・高寺望夢のときに森下は二盗を成功させた。さらに高寺は四球。さらに続く伏見寅威も7球を粘って歩いた。最後は熊谷が倒れ、無得点に終わったのだがこの回だけで岸に31球を投げさせ、ダメージを与えたのである。

「岸が頑張っているな、と。現役のとき、日本代表もいっしょに行きましたしね(09年)。そう思いながら、このあたりで疲れてくるんじゃないかなと…」。指揮官・藤川球児も4回の攻撃をそう見ていた。それが5回、佐藤の適時二塁打を生み、結果としてその後の大量得点にもつながっていった気はする。

この3連戦は「スタジアム・ヒーローズ・デー」だ。球場で働くすべての人、野球を愛するすべての人が主役になる日というテーマだが、無安打だったものの打席でグッと我慢した森下もヒーローではあった。故障での離脱とならないことを願う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)