野球用具メーカーの名門「SSK」の協力を得て、道具選びのイロハを紹介します。バット編の第3回です。

(2016年2月4日付紙面から)

ミート率も表示されるスイングスピード測定器。価格は3万3000円
ミート率も表示されるスイングスピード測定器。価格は3万3000円

 「重いバット=飛ぶ」とは、一概に言えない。単純に言えば、時速150キロのボールに対して時速150キロのヘッドスピードがあれば、衝突時の力関係は「1対1」になる。芯に合わせて押し込めれば、反発力を利用して打球は飛んでいく。ボールの力に負けないスイングを身に付ければ、バットの重量で飛距離はそう変わらない。ヘッドスピードと重量の関係を知れば、選択の基準がクリアになる。

 高校野球では01年以降、安全面の理由から「900グラム以上」というバットの規定が設けられている。腕力が飛び抜け、体幹の近くでバットを振るソフトバンク柳田は、球児よりも軽い880グラム前後のバットを使っている。五輪で金属バットが使用できた時代、キューバ代表は700グラム台のバットを使っていた。ちなみに重さが同じであれば、遠心力を利用できる長いバットの方が単純に飛ぶ。

 現在は、小型化された「スイングスピード測定器」が発売されている。ボールを置いたティー打撃を行い、バットとの衝突時の速度を測る。速度だけでなく、ミート率も数字で分かる。世代別の平均速度を示す(バットの重量で変化する。プロはバットの形状、重量が選手によって異なるため、数値に幅が出る)。

 【小学校高学年】時速80~90キロ

 【中学生】時速90~110キロ

 【高校生】時速115~120キロ。クリーンアップは130キロ以上

 【プロ】時速135キロ。クリーンアップは145~150キロ以上

 測定器の開発に携わったSSK社の中山雅文さん(45)が、「ミート率については、プロ野球選手は、まず全員が100%です」と説明した。可能なら定期的に測定し、数字の変化を書き留めておきたい。

 ヘッドスピードが上がってきたからといって、重いバットに変える必要はない。自分のパワーにバットがついていけなくなると、スイングが波を打ち、速度、ミート率とも数値が下がっていく。買い替えのタイミングである。高校生になれば、無条件に900グラム以上のバットを使わなければいけない。実際プレーしている球児は分かると思うが、この重さを使いこなすにはかなりのパワーが必要になる。計画的にバットのレベルを上げたい。

 手元には、バットを2本用意したい。今、試合で使っているバットより重いもの、あるいは長いものを振り込む。木のマスコットバットや、木と竹を合わせ強度を増した通称「ラミバット」など、さまざまな練習用バットがある。

 しかし、硬式野球で使う金属バットは、1本2万~2万5000円する。経済的な負担を考えても失敗したくない。現場の実情として、中学生以上の選手は、そのカテゴリー内で1度はバットを替えることが多い。次に使うことを想定し、1ランク上の金属バットを練習用とすることが効率的。買い替えの移行時もスムーズになる。

 バットと同じように、グラブ選びにも踏むべき段階がある。(つづく)

【小島信行、宮下敬至】