体重130キロ。8キロのダイエットに成功して夏に臨んだ、連合チームの4番・佐々木海斗選手
体重130キロ。8キロのダイエットに成功して夏に臨んだ、連合チームの4番・佐々木海斗選手

 連合チームを書くことは難しい。

 今夏の、部員不足による連合チームは全国57チーム。宮城は2チームあった。加美農・伊具(2校連合)、宮城水産・気仙沼西・石巻北(3校連合)の5校だ。2012年に日本高野連が規制を緩和し、多くの少人数野球部が公式戦に出られるようになった。昨秋は部員10人の不来方(こずかた)が岩手大会で準優勝し、21世紀枠でセンバツ大会に出場。「部員数は関係ない。野球は9人でやるスポーツ」という選手のコメントが大きな勇気となった。

 不来方の奮闘をきっかけに、少人数野球部の在り方、連合チームの意義が話題になってる。しかし、現実は深刻すぎる問題。国の少子化は社会問題で、高校の統廃合という教育問題も絡む。野球界の問題だけではないからだ。多すぎる少年野球の試合数や、指導者の不足、公園での「キャッチボール禁止」に代表される練習場所の問題、野球をサポートする保護者の負担、団体スポーツ離れ…などなど。抱えている問題は山積みだ。

 「連合チームをどう取材したらいいのだろう…」

 悶々とした思いを抱えつつ、宮城の連合チームを取材してきた。そして17日、加美農・伊具が敗退し、連合チームの夏が終わった。


春は岩出山、柴田農林と3校連合を組んだ伊具。大会のたびに組むチームが変わるためコミュニケーション能力が鍛えられるのが連合チームの特徴だ(4月撮影)
春は岩出山、柴田農林と3校連合を組んだ伊具。大会のたびに組むチームが変わるためコミュニケーション能力が鍛えられるのが連合チームの特徴だ(4月撮影)

■シード校相手に走塁対策。本気で勝ちを目指した


「自分のエラーで負けてしまった。このチームでここ(Koboパーク宮城)で試合ができたことは思い出になったけど、とにかく悔しいです」

 連合チームの4番・佐々木海斗(加美農・3年)はおえつしながら泣きじゃくった。エースの大槻千裕(伊具・3年)も涙が止まらない。シード校・石巻工に0-7(7回コールド)の敗戦。4回、2つのエラーで失った3点を悔やんだ。「相手は足を使ってくる」。データを頭に入れ、その対策を2週間かけて準備してきた。もちろん、勝つつもりだった。5月の結成から2カ月半。週2回の合同練習で意思疎通はできていた。だから悔しくて、涙が止まらなかったのだ。

 熱い指導者がこのチームの“仕掛け人”だった。今春、伊具監督から、加美農部長に転任した佐伯友也部長(29)だ。小人数のチームを長年指導している。熱血漢で知られる佐伯部長のテーマは「子どもたちに、いろんな景色を見せてやる!」。野球は正直、うまいとは言えない選手ばかり。中には、中学時代に不登校だった選手もいる。「それでも、この子たちは野球が大好きなんです。雪の降る日も、練習を真面目にやってきた」と、この夏も「最高の思い出作り」の手助けをした。

 例えば、伊具時代、その人脈を生かして仙台育英、東北などの強豪Bチームと練習試合を実行した。今大会直前も、仙台二に頼み込んで、練習試合を組んでもらった。結果は0-19と大敗だったが、試合後、合同でケースバッティング練習を行い、選手間の交流を図った。今夏に受けた取材は5社以上。注目されることで選手たちの顔つきが明るくなり、発言も滑らかになっていった。

 「今すぐ何かが変わるわけではないけれど、こうやって連合チームの存在を発信することも我々の役目。両校の指導者6人で案を出したり、励まし合いながら、楽しい夏を送らせてもらいましたよ」と短かった夏にも笑顔だった。


大会直前、仙台二との練習試合は0-19。試合後に実戦形式の打撃練習を行い、交流を深めた
大会直前、仙台二との練習試合は0-19。試合後に実戦形式の打撃練習を行い、交流を深めた

■2020年は、宮城の中学生は2000人減


 おそらく、この先も「連合チーム」の数は増えていくだろう。9月にはセンバツ大会をかけた秋季地区大会が始まるが、昨秋は東部地区20校のうち、部員15人以下のチームが13校もあった。平成32年度には、中学生の数が全県で2000人減ることも統計に出ている。県高野連では今大会から全ての土日、全会場で少年野球の選手による始球式を行っている。発案に参加した揚野義宏事務局長は「『4~9歳男子がよく行う運動』のベスト10で、2013年に野球がランク外になりました(1位はサッカー)。子供たちに野球の楽しさを味わってもらい、普及につながって欲しい」と願っている。

 連合チームの選手たちに聞くと「野球が好きだからやっている」、「このチームは最高です」と、環境を言い分けにせず、ひたむきに白球を追い、自分たちなりの高校野球を全うしていた。しかし、連合チームはあくまでも「救済措置」。単独チームで2年半の高校野球をやり遂げることに本来の価値がある。だからこそ、考える。野球の未来を。【樫本ゆき】