2年連続センバツ切符へ順当発進だ。昨秋の全道大会覇者、札幌第一が10-4で札幌龍谷学園を退け、初戦を突破。2点差に迫られた直後の8回裏、3番宮沢晃汰遊撃手(2年)が無死一、二塁から右前適時打を放ち、この回一挙4点で再び突き放した。3安打4打点の宮沢を筆頭に、今春の甲子園を経験したメンバーが投打でチームをけん引。道勢では7校目のセンバツ連続出場を目指す。

 聖地での経験が、勝負どころで生きている。2点差に詰め寄られた直後の8回裏。一瞬、漂った嫌なムードを、ディフェンディングチャンピオンは軽やかにはねのけた。札幌第一は四球と犠打野選で無死一、二塁。打席に立った3番宮沢は、バントの構えからヒッティング。「サイン通り。今日はチャンスでよく回ってきたので、走者をかえすことだけ考えた」。昨秋からスタメンを張る背番号6は、鮮やかなバスター打法で、この回一挙4点の口火を切った。

 「チームを引っ張るべき人が活躍したのは良かった」と菊池雄人監督(44)が言う通り、この日4安打1打点の5番中村泰賀主将(2年)、7回を3安打1失点にまとめた先発の左腕エース冨樫颯大(同)と今春のセンバツで試合に出場した選手の活躍が目立った。7人残る甲子園メンバーの経験値が、最大の強みになっている。

 宮沢にとって甲子園はつらい場所だった。大会前から打撃の調子を崩し、取り戻せないまま今夏を道大会4強で終えた。打撃に気を取られるあまり守備に身が入らず、遊撃から二塁へコンバートされたことも。つらい日々を乗り越え「タイミングが合わなくても、今は打席で修正できるようになってきた」。苦手の外角直球を捉えた4回の適時打に、成長の手応えを感じた。

 遠軽の実家は、連続して北海道を襲った台風の被害を、辛うじて免れた。「100メートルも離れていない」という湧別川が氾濫し、近所の公園は丸ごと濁流にのまれた。「それなのに、親は『台風が来るから気をつけなさい』と札幌にいる自分のことを気遣ってくれる」。遠く離れた地で応援してくれる家族のために「去年は先輩たちに連れて行ってもらった甲子園。今年は自分たちが。2年連続、狙ってます」。秋の王座は、どこにも渡さない。【中島宙恵】