第90回選抜高校野球(23日開幕、甲子園)に出場する駒大苫小牧は20日、甲子園練習を行った。雨で室内練習となったが、終了後に全員でグラウンドに出て広さや視野の確認作業を行った。白田悠祐中堅手(3年)は、06年夏の甲子園決勝、スタンド観戦した駒大苫小牧-早実戦で、祖父健治さん(享年89)と約束した聖地に初めて立った。昨年2月に亡くなった、野球を最初に教えてくれた天国の“恩師”に活躍を誓った。

 甲子園の入り口に1歩踏み入れた白田は、胸の中で祖父健治さんに語りかけた。「じいちゃん見ていてくれ。俺、絶対に活躍するから」。45分の室内練習が終わると、幸い雨がやんでいたため約5分間、グラウンドに出る機会を与えられた。わきあがる興奮。一目散に自分が守る中堅の位置まで駆けて行き、空とスタンド、球場全体を眺め、距離感や風の流れをじっくりと堪能した。

 「すごい広さを感じた。特に左中間、右中間が広く感じた。芝はこれまで練習していた甲賀の人工芝より長い。打球がそれほど走る感じではない。守るときのイメージはできた」。足場を確認した後は外野フェンスに触れ「クッションがあまりはねない感じ」。打席後方の奥行きもチェックし「距離感が頭に入った。1回見られたことは大きいです」と手応えを口にした。

 空から祖父が見てくれている。だからこそ、最高の準備を整えたかった。6歳の夏、東京・青梅から甲子園に連れて行ってもらい観戦したのが、再試合となった駒大苫小牧対早実の決勝戦だった。勝ったのは地元東京の早実だったが「駒苫の歓声、吹奏楽のすごさ。自分の今までの記憶で、これ以上ない一番のものだった」。隣の祖父がぽつりと言った。「お前もこういうところで野球をやってくれたらうれしいな」。その言葉が、北海道で野球をやるきっかけになった。

 一緒にキャッチボールし、野球の手ほどきをしてくれた。小学1年のとき、最初にバットを買ってもらった。そんな大好きな祖父が昨年2月、病で旅立った。苫小牧で練習していた白田は両親の連絡を受け、夜の便で帰省。冷たくなった祖父の前に立ち、涙をこらえ誓った。「甲子園で立派になったところを見せる」。故郷を離れ2年がたった。なかなか会えなかった祖父が今、すぐそばにいる。強い使命感を力に、約束を果たす。【永野高輔】