21世紀枠でセンバツ初出場の熊本西が「トリ」でジャイアントキリングに挑む。第91回選抜高校野球大会(23日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選が15日、大阪市内で行われ、参加校中最後の登場となる第6日第1試合で昨年秋近畿4強の智弁和歌山との対戦が決定。「格の違い」を感じながらも「全員野球」で大金星を狙う。

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熊本西の横手文彦監督(43)は苦笑いを浮かべた。「うわっ、やべって感じでしたね」。初のセンバツ初戦が、全国屈指の強豪、智弁和歌山との対決に決まった瞬間を振り返った。「うちは出場中最下位、相手はトップ3。そんな感じですよね。点差の記録を作られないようにしないとですね」と笑った。

しかしそれは本心ではない。21世紀枠での出場が決まってから「選手たちの成長が目に見えて分かってきた。それがうれしいし、せっかく甲子園という舞台で出来るなら、練習試合でもできない相手がよかった。力の差があっても逆転できるのが野球だと思ってますから」。昨年11月の練習試合、死球で部員を亡くしてから「精神的に追い込まれた選手もいた」なか、克服していくナインの姿に横手監督は感動していた。昨年秋の近畿大会4強入りした相手に対して「対策しても無理かもしれないが、対策をしっかり練ります。相手を分断してこちらは結束します」と前を向いた。

大舞台でも緊張しない努力をしてきた。8日の解禁日に行った練習試合で同校バスケット部員らにお願いし、ネット裏で応援してもらった。横手監督は「女の子にキャーキャーという声を出してもらいました。意識するなかでもプレーできるようにした。『黄色い声大作戦』です」。主将でエースの霜上幸太郎投手(3年)も「初めてのことで戸惑ったが声も力に変えることができた」と成果に期待している。

死球で亡くなった部員を入れた「部員45人で戦う」が合言葉。横手監督も「彼はすでにここ(大阪に)来ていたと思う。我々がそれについていった。そして相手(智弁和歌山)を導いてくれたと思ってます」。甲子園のはるか上から見守るチームメートとともに、熊本西44人が大きな大きな相手に正面から挑む。【浦田由紀夫】