レジェンドOB直伝の投球術で旋風を吹かす。前日5日に県独自の大会開催が決定した青森では6日、八戸市内で八戸西、八戸工大一、青森北の県内3校による総当たりの練習試合が行われた。

八戸西は八戸工大一に1-2、青森北に5-7といずれも惜敗したが、エース左腕・山田英寿(3年)が昨秋県4強の八戸工大一を8回2失点に抑えて完投。同校OBで元日本ハム投手の中村渉さん(40)の教えを胸に、集大成の夏に備える。第102回全国高校野球選手権大会(甲子園)および同青森大会に代わる県独自の大会は、7月14~28日に開催される。

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山田は6回まで毎回走者を出したが、粘りの投球でピンチを脱した。会心の一打で失点を許したのは6回のソロ本塁打のみ。8回裏2死満塁も中飛で抑えた。「テンポ良く投げることができたのは良かった。ホームランの1球が甘く入ったのは修正点」と自己分析。小川貴史監督(36)は「代替大会への目標ができて、3年生は絶対勝つぞという気持ちが出ていた。特に山田は朝早く来て、すごく走り込みをしてから試合に臨んでいた」と登板前から意識の高さを感じていた。

3年前から同校出身の元プロが外部コーチとして、後輩の指導に携わる。また新型コロナウイルスの影響で練習自粛時は、部員全員が登録したグループLINEを活用。各自の素振りなどを動画で共有し、同監督や中村コーチらの助言を受けて、技術向上を図った。

山田は「シャドーピッチングで体重が後ろに残らず、前に突っ込み気味だった。(同コーチから)左足に残して投げることを意識してと言われた。今日の投球では生かし切れたと思う」と内容に納得した。同コーチは別の練習試合視察のため不在だったが、同じ左腕として教えを実践し、結果でも恩返しした。直球の最速131キロは昨秋計測したもので、一冬越えて力強さは増した。今夏は「140キロを出したい」と手応えはある。

代替大会の開催決定は5日の練習後、小川監督から選手たちに伝えられた。西舘智亮主将(3年=写真は東北題字)は「大会開催が決まって、身が引き締まる気持ち。青森県優勝に向けて、短い時間ですが、みんなで仕上げていきたい」。創立創部は1975年と歴史は浅く甲子園出場はないが、78、79年の連続準Vなど、夏の8強以上は15度を誇る実力校。OBが果たせなかった夢を、後輩たちが実現させてみせる。【相沢孔志】

◆中村渉(なかむら・わたる)1979年(昭54)8月19日生まれ、青森県五戸町出身。八戸西から青森大。社会人は三菱製紙八戸クラブに所属し、04年にJT(仙台市)の補強選手として都市対抗4強進出に貢献。同年にドラフト7位で日本ハム入団。3年間プレーも1軍では未勝利。現役引退後は民間就職した後、実家の畳店を継ぐ。八戸西の外部コーチは今年で3年目。左投げ左打ち。現役時代は183センチ、85キロ。