第102回全国高校野球選手権(甲子園)中止の代替となる「東北地区高校野球大会」が今日9日、宮城・石巻市民球場で開幕する。軟式の部は宮城・大崎市鹿島台中央野球場で開催され、平工(福島)、羽黒(山形)は両県の加盟校が1校のため今大会が初戦。昨秋の東北大会が台風19号での中止に加え、今春、夏を含めた公式戦を失った無念も抱き頂点に挑む。

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昨夏南東北準Vの平工軟式野球部の11人は、現チームにとって最初で最後の公式戦を迎える。県内唯一の軟式野球部で、昨秋は台風19号、今春はコロナ禍の影響で東北大会が中止となり、新チーム発足から1度も公式戦を経験できていない。部員不足の影響もあり、来年度で廃部が決定。それでも主将でエースの下山田駿太投手(3年)らナインは代替大会開催を信じ、ここまで練習に励んできた。

冬場は走り込みで足腰を鍛え、自粛期間中はシャドーピッチングでフォームを固めることに精進した下山田は「力感なく投げられている。リリースポイントも安定してきた」。キレのある直球を軸に投球を組み立て、打者の反応を見ながら変化球でかわす投球術を身につけた。

卒業後は土木関係の仕事を目指す。小3の3月に東日本大震災を経験。「水もない状況だった。いろんな方々に助けてもらった。福島の復興に携わる仕事がしたい」と恩返しの気持ちが強い。昨秋は台風19号が同校のあるいわき市を直撃。ボランティア活動に出向き、倒れた家財や床下浸水で汚れた畳の片付け作業などを手伝った。「自分も助けてもらったので、人助けすることが正義だと思いました」と自主的に行動。人間性も磨いた。

初戦は岩手県予選決勝で21安打、26得点を挙げた専大北上と対戦する。「投打ともにすごいチーム。接戦の勝負に持ち込んで、勝負強さを発揮させたい。記憶に残る大会にします」と意気込んだ。【佐藤究】