時が来ると、OBたちの両手の指は自然と組まれた。全員の視線が、ノートパソコンの画面にそそがれた。
午後3時半過ぎ。水戸一(茨城)の一室に野球部OBが集まっていた。「選ばれたらベンチ入りは何人だ?」「今日は飛田先生の命日。お墓参りして、えんじ色のカーネーションをささげたよ」「○○新聞か。(OBの記者)○○は今日は来ないの?」。かしましいひと時は、選考委員会のライブ配信が始まると終わった。沈黙。祈り。だが、21世紀枠の選出から漏れたことがすぐに分かり「ああ…」と、ため息が漏れた。
午後4時20分。校内にある飛田穂洲像の前に野球部員26人が集まった。笑顔も見える。校舎の方から御厩校長が現れると、表情が引き締まった。ウインドブレーカーを脱ぎ、通行の邪魔にならないよう隅に整然と並べる。像の前に整列。校長から、茨城からは常総学院が選ばれたこと。21世紀枠は別海(北海道)、そして田辺(和歌山)が選ばれ、水戸一は補欠校にも入らなかったこと。だが、21世紀枠の候補校にはなったことを誇りに、最後の夏へ頑張って欲しいと告げられた。26人誰ひとり表情を変えなかった。聞き終わると、飛田穂洲像に「ありがとうございました」と一礼した。
発表から1時間近くたっていた。落選を知った上での残酷なセレモニー、ではなかった。津田誠宗主将(2年)は「校長先生に聞いたタイミングで野球部全員、知りました」。スマホは禁止されていない。だが。
「全員で知りたいというのが第一にありましたし、水戸一校として学業優先、勉強第一を頭に置いてやっている。(発表された)3時半は授業の時間だった。部活動は4時20分から。全員スマホをオフにしました」。前日の全校集会で、他の生徒にも協力が呼びかけられた。フライングで告げる無粋者はいなかった。
昨秋に県4強を果たした。私学が幅を利かす茨城で、伝統の公立校が存在感を見せた。主将は「素直に残念」と吐露したが、「チーム全体としてやってきたことは間違いなかったと確信しています。夏へやっていくだけ」とさばさばした表情にも見えた。
エースの小川永惺投手(2年)の言葉が心強い。「悔しいですけど」と前置きして、こう続けた。
「自分としては全勝してというか、やっぱり負けて甲子園に行きたくなかったので。プラスに捉えるなら、逆に選ばれなくて良かったのかな」
昨秋7試合に投げ、5勝、防御率1・93の大黒柱。春、そして最後の夏へのテーマには自身のレベルアップだけでなく、投手陣全体の底上げを掲げた。
木村優介監督(39)は「2人(津田、小川)の言葉も非常に力強い。私もそのとおりだと思っています。やはり自分たちの手でつかみに行く」と言った。70年ぶりの甲子園は、勝ってものにする。【古川真弥】

