花巻農が王者・花巻東を相手に“ベストゲーム”で大会を去った。
新チーム結成後、公式戦で敗れた試合はコールドばかり。花巻東とも今春の地区予選で0-13。5回で試合が終わった。
だが、この日は違った。5回を終了して0-1。後半は王者の機動力にかき回されたが、大健闘にスタンドからは拍手が鳴りやまなかった。花巻東の佐々木洋監督(48)も「花農さんもしっかりとチームを作られて。春の地区大会は5回で勝たせてもらったんですけど、本当に別チームのような。守備やピッチャー陣の良さに驚きました」と賛辞を送った。
チームが生まれ変わった瞬間を、花巻農・今野信喜監督(43)は記憶していた。春の地区予選で花巻東に大敗した後、遠野との敗者復活戦。2-9から逆転勝利を収めた。
「そこからチームが非常に伸びて、もう自信に満ちあふれたような感じで。同じチームではあるんですけど、いくら(点差が)離されても、いろんな場面でも乗り越えていけるっていうのが、多分今日の試合につながったのかなと思います。今日は完敗ではあるんですけど、彼ら3年生がやってきた数年の中ではベストゲームなんじゃないかなと思います」
この日の好ゲームを引き立てたのは、身長163センチのエース左腕・小原幸斗投手(3年)だった。
直球は110キロ台ながら、カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォーク、カットボールの多彩な変化球を持つ。この日は80キロ台のスローボールも投じた。時折サイド気味に腕を振り、5回まで4安打1失点。今春の東北大会王者を相手に7回4失点(自責3)と、堂々たる119球だった。
祖父は米農家の小原幸は環境科学科に通う。「米の授業があって、あとは祖父がトピアリー(樹木などを刈り込んで人工的に仕立てた造形物)をやってて。それがかわいくもあり、かっこよくもあって」と、幅広いカリキュラムが組まれている花巻農に進学した。
卒業後のプランは投球と同様に多彩。「建設業に就く予定なんですけど、米農家にいくかもしれないし、趣味でリズムトレーニングの資格に挑んでて。インストラクターになるのもありかな。あとは野球の指導者も全然ありです」。目を赤く腫らしながらも表情は明るく、将来の青写真を思い描いた。
母校の将来を心配する。同校はそれぞれ定員40名の3学科が設置されている。ただ近年は少子化もあり、入学者が減少。「僕のクラス(環境科学科)が24人で。1年生は14人になって。どんどん入る人が少なくなってて。学校自体がなくなっちゃうと、僕たちが頑張ってきた学校がなくなるのはうれしくないので。花農はいろんな勉強ができると思うので、来てくれるとうれしいですね」と、不安も口にした。
10人の3年生が抜けると、新チームは選手8人、マネジャー2人になる。「僕たちのプレーを見て、少しでも花農に入りたいって思ってくれたら」。チームと母校の行く末を気にしながら、グラブを置いた小原幸が未来へ進んで行く。【黒須亮】

