勇退シーズンは“ヒヤヒヤ発進”だ。シード校の早鞆(山口)が5点リードの9回に1点差まで迫られながら、粘る萩商工を振り切った。今夏限りでの退任を決めた元ダイエーの大越基監督(53)の夏初戦は辛勝スタートとなった。現役時代に仙台育英(宮城)で甲子園準優勝を果たした指揮官を、もう1度あの舞台へ-。ナインは「恩返し」を胸に57年ぶりの頂点を目指す。佐賀大会は有田工、白石が3回戦を突破し、8強が出そろった。

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快勝ムード一転も、大越監督は選手を信じ、ベンチにどっしり座っていた。

「毎年、夏の初戦の入り方ってすごく難しいので。やっぱり硬かったですね」

7-2で迎えた最終回。先頭に四球を与え、二塁打、三塁打と2連続適時打で2点を返される。さらに2点を失い、なおも2死二塁。最後は空振り三振で逃げ切った。スコアは7-6。最大5点リードも、1点差でのヒヤヒヤ突破に「粘り強かったですね。どっちに試合の流れが転ぶか分からなかったです」。紙一重の接戦勝負をモノにし、安堵(あんど)の表情だ。

チームを率いて16年目を迎え、今夏限りでの勇退を決心した。「4、5月ぐらいに決断したかな。何十年もやっているっていうこともあって。1回外から野球を見るのも勉強になるなと思った」と胸の内を明かす。退任後は野球部の副部長に就任する予定。保健体育の教員でもあり「学校の先生は好きなので」。今まで通り教壇にも立つ。

ラスト采配にも、気負いはない。選手ファーストを最後まで貫くつもりでいる。「自分の大会じゃない。子どもたちの、特に3年生の最後の大会。1試合でも多く戦わせてあげたい」。

元ダイエーの選手で仙台育英では3年夏にエースとして甲子園準Vに輝いた。華麗な実績に「ちょっと目立ってしまう。あんまり目立ってはいけないなって。子どもたちが主となって、自分は後押しをする役割なので」。イニング間の円陣もほとんど声をかけない。指揮官は黒子役に徹する。

ナインは「恩返し」を胸に刻む。6回2死三塁で2点ランニング本塁打の高松航希外野手(3年)は言う。「勝つことが恩返しになる。2年半、お世話になっているので自分たちの野球で全部勝っていきたい」。見据える先は57年ぶり4度目の夢舞台。大越監督の花道を飾るためにも、負けられない夏が始まった。【佐藤究】

◆大越基(おおこし・もとい)1971年(昭46)5月20日生まれ、宮城・宮城郡七ケ浜町出身。仙台育英ではエースとして89年春、夏と2季連続で甲子園に出場。春8強、夏は準優勝に輝いた。卒業後は早大進学も中退し、米マイナーリーグ1Aのサリナスに入団。92年ドラフト1位でダイエー入り。投手から外野手転向を経て、03年に引退。04年4月に山口・下関市の東亜大に入学。教員免許を取得し、07年から保健体育教員として早鞆に赴任。09年秋に野球部の監督に就任した。

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