MLBが、今季開催に当たって101ページにも及ぶ新型コロナウイルス感染防止のための開催マニュアルを作成した。選手が安全にシーズンを送るために球場内外でどう行動すべきかを、非常に事細かに定めている。

その中には、選手がルーティーンや願掛けとして行っている行為に影響を及ぼす新ルールも多い。野球選手は特に、どのスポーツ選手よりもルーティーンにこだわる傾向が強いといわれる。それだけメンタルが重視されるスポーツということだが、そのルーティーンができない環境になったとき、どれだけパフォーマンスに影響を及ぼすのか、気になるところだ。

例えば、今季は唾吐きが禁止になった。唾吐きといえば、通算41本塁打を放った元レッドソックスのデービッド・オルティス氏(44)は現役時代、打席に入る前に必ず両手に唾を吐くことで有名だった。これもジンクス的な意味合いもあったようなので、今も現役だったら適応するのに苦労しただろう。オルティスのような選手は他にも多く、オールスターに4度選出されたロッキーズの主力チャーリー・ブラックマン(33)は「唾吐きは自分のプレースタイルの中に深く浸透している行為。メンタルを一定に保つために必要不可欠」と主張し、100%の確率で唾を吐くと公言している。

暴れ馬の異名を持つヤシエル・プイグ外野手(29=インディアンスFA)は、打席に入ると1球ごとにバットのヘッド部分をなめることをルーティンにしているが、それは今季どうなるだろう。唾を吐くわけではないが、バット表面の唾液が球に付着し、野手がその球を捕球するかもしれないとなると感染リスクがあるため、問題視される可能性は高い。プイグにとっては、その時に感じるバットの味が調子のバロメーターになっているそうで、大事な儀式のようなもの。これを果たしてやめられるのだろうか。

グラウンド外でも、選手への行動規制は多い。例えば遠征先では外食は禁止され、口にしていいのは基本的に球団から配られる弁当ボックスだけ。同じものを食べたり遠征先でお決まりのレストランに通うことを重要なルーティーンにしている選手も多いため、これを改めなければならないとなると、やはりパフォーマンスへの影響が気になる。新型コロナウイルスの影響で様変わりする今季のMLBは、ルーティーンに固執しない選手が成績を残すシーズンになるのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)