悩み苦しみ、浮かない表情だった阪神マット・マートン外野手(33)がハツラツプレーで貢献した。勝利への貪欲な姿勢を見せたのは6回だった。2死走者なしから、鮮やかなゴロで三遊間を破る。一塁走者で塁上に立つと隙をうかがう。山井の2球目だ。変化球はワンバウンドになり、松井雅がわずかにはじく。その瞬間だ。猛ダッシュを仕掛けて、二塁を陥れた。
同点の局面だった。得点圏に進めば、山井への重圧は増し、阪神勢の士気は上がる。和田監督も「2死走者なしから、最近は、どうしても点を取れなかった。いろいろなことがあるけど今日に関しては、マートンらしい集中力があった。それができれば、ああいう走塁も随所に見られるようになる」と高く評価した。後続もつないで満塁機を築くと岩田の3点打が出た。主役こそ先発左腕に譲ったが、渋い走りで、脇役を完璧にこなしきった。
阪神の浮沈はマートンの復調にかかっている。試合前まで打率2割4分1厘と低調だった。爽やかな青空が広がる甲子園。試合前練習中には、和田監督自らが動いた。右中間フェンス際で話し始めると、助っ人は直立不動で聞き入る。20分近く意見交換して、再び練習に戻る一幕があった。和田監督は「2人の話だから口外しない」と話すのみ。雑音に惑わされず、戦う男同士で思いを分かち合えばいい。異例のフォローも、復調を願う気遣いだろう。
球審のジャッジに不服をあらわにして、そこから悪循環に陥った。打順は6番に下がる。1度は復調したかに映った打撃も思うように上昇カーブを描けない。3日巨人戦の引き揚げ際には報道陣にもいら立ちを隠せなかった。まだ本調子ではないが野球に対してブレはない。甲子園での試合後、必ずトレーニング室にこもって筋力トレーニングに励むのが日課だという。感情の起伏が揺れるのも、強烈な向上心の表れだろう。
この日はステファニー夫人や息子たちが球場で声援を送る。こどもの日は頼もしいパパらしく、力強く振る舞った。試合後は無言を貫き、クラブハウスへ消えた。和田監督は思いを代弁する。「まだまだ、マートンからしたら、落ち着く打率じゃない」。昨季の首位打者なのだ。誰も代役できない存在として、必死に前へと向かう。【酒井俊作】



