待ちこがれた1本だ。巨人阿部慎之助内野手(36)が阪神戦の2回、今季1号となる先制2ランを放った。舞台は4月17日に左太もも裏を痛め離脱を余儀なくされた甲子園。約1カ月ぶりに戻ってきた因縁の地で、広い右中間の最深部に放り込んだ。43試合目で出たシーズン1号は、プロ15年目で最も遅い。残り100試合で巻き返す。

 万全ではない下半身をフルに使った。2回2死一塁、阿部が阪神岩田の外角低め、127キロスライダーを強振した。相手の代名詞に体勢を崩すことなく、けれん味なくすくい上げた。打球は右中間席に吸い込まれた。遅ればせながら、43試合目に飛び出した今季1号。三塁ベース手前で、ナインと目が合うと我慢できず、思わず笑みがこぼれた。「芯は芯だけど、入るとは思わなかった。甲子園で打てたのは大きいね。自分でもうまく打てたなと思う」と、珍しく自画自賛した。

 1本まで、道のりは険しかった。春季宮崎キャンプから歯車は狂い始めた。右ふくらはぎを負傷。完治したかと思えば、4月17日の阪神戦で左太ももの肉離れと、けがが続いた。2軍調整となり、リハビリ初日の同19日。ジャイアンツ球場を訪れると「またつまらないリハビリ生活が始まったよ」と、思わず弱音を漏らした。主軸としてチームを支えてきた男が、1軍のゲームをテレビ観戦。午後6時に合わせて、自宅で焼酎を片手にソファに座っている自分が情けなかった。

 阿部 普通のサラリーマンと同じだな。何をやってるんだオレは、と思ったよ。

 見ていられず、試合途中の午後8時に就寝することもあった。午後10時就寝の午前6時起床の繰り返しだった。「この生活は暇すぎる。もう飽きたな」と、ついつい愚痴が口癖になった。それでも、球場入りすれば、切り替えた。練習前の薄暗い室内で素振り。若手以上にグラウンドには早く出た。地道な積み重ねが、けがをした因縁の甲子園での本塁打につながった。

 今でも万全ではない。立て続けに故障し、自然とかばっていた。1軍合流してからは両もも、両ふくらはぎにはテーピングをグルグルに巻いて試合に臨んでいる。もう離脱なんかできない。「打ち方忘れちゃったよ」と“慎之助節”で笑わせつつ「こんな思いは、もう2度としたくない」と本音を吐いた。阿部にはゆっくりとダイヤモンドを1周する姿が一番似合う。あと100試合もある。不本意だった日々を取り返す。【細江純平】

 ▼阿部がチーム43試合目、阿部自身としては22試合、83打席目で今季初アーチを放った。83打席目は06年の109打席目、08年の84打席目に次いで3番目に遅く、チーム43試合目は06年の30試合目を抜いて最も遅い1号となった。これまで阿部は通算200人から1発を放っているが、前日まで対岩田は67打数22安打、打率3割2分8厘も本塁打は0(他に4四死球、1犠飛)。阿部が50打数以上対戦している24人の中で、岩田が唯一本塁打を打っていない投手。岩田から73打席目の対戦で初アーチを放ち、50打数以上で本塁打0の投手がいなくなった。