右翼スタンドに着弾すると、その上空に稲光が走った。阪神今成亮太内野手(27)の今季1号となる先制弾を、長野の地が祝っているかのようだった。黒田撃ちの先陣を切った男は、フラッシュを背に、ダイヤモンドを1周した。

 「黒田さんはメジャーでもやっておられた方。胸を借りるつもりでいった。2ボールだったので、思い切っていこうと。入るとは思わなかったです」

 0-0の2回2死走者なし。マウンドには広島黒田。カウント2-0からの3球目、低めへの132キロスライダーに反応した。ライナー性の打球は右中間スタンドまで届いた。三塁ベンチに戻ってくるとジャンプをしながら笑顔でハイタッチ。チームは黒田に2戦2敗を喫しこの日を迎えていた。故障で欠けていた今成は初顔合わせだった。

 今季2度目のケガで戦線離脱した4月上旬。リハビリに取り組む鳴尾浜で、今成は笑い飛ばした。「肋骨(ろっこつ)12本折れてます、って書いておいてくださいよ」。右脇腹の張りから復帰したものの、すぐに右肋(ろく)軟骨損傷を負ったときだった。「急ぎたいんですけどね。今、ここにいる場合じゃないだろうって思うこともある。でも治さないと意味がないから1歩1歩着実にいきますよ」とマイナス思考の言葉を発さなかった。悔しさを胸の奥にしまいこんだ。

 そんな男は周囲を取り込み、空気を変えていく。共にリハビリに取り組んでいた2年目陽川の表情が暗くなれば、声をかけた。常に一緒にいる姿はまさに兄弟のよう。新加入のサンティアゴともすぐ仲良くなり、バント練習用にバットをプレゼント。「欲しいっていうからあげたんだよ」と、1軍へ送り出した。

 先制弾を放った2回表の終了後から降雨のため中断があった。「幻かなと思いました」と笑って振り返った。さあ、これからはバットで虎のVロードを明るく照らしていく。チームが苦手とする強敵に見舞った強烈な1発が、今成の反攻のノロシだ。【宮崎えり子】