日本ハム随一のイケメン中村勝投手(23)が、オリックス19回戦で今季初完投での2勝目を挙げた。相手打線を独特の投球スタイルで圧倒。プロ6年目で最多7三振を奪い、手玉に取った。140キロに1度も到達せず最速は139キロも、最遅90キロのスローカーブと抜群の緩急を生命線に快投。チームを5カード連続の勝ち越しへ導いた。貯金は再び今季最多19。シーズン終盤に登場した救世主が、ソフトバンク追撃ムードを高めた。

 きつく締めていた甘いマスクが、最後にほどけた。中村が照れくさそうに、はにかんだ。9回2死一、二塁。駿太を遊ゴロで切り、今季初めて1人で投げ切った。自身連勝で2勝目。「チャンスをいただいている立場。何とかしたかった」。完投勝利は昨年5月24日DeNA戦以来で、くしくも同じプロ入り最多129球の力投が報われた。「先発投手はいつも最後、9回まで投げたいと思っている」。美学を体現し、1失点でまとめ上げた。

 自在に緩急を操り、オリックス打線を幻惑した。前日22日は、斎藤らから10得点。勢いづいていたが、特殊な90キロ台前半のスローカーブを変化球の軸に据え、気勢をそいだ。三振数はプロ入り最多の7個を積み上げた。糸井-中島-ブランコとビッグネームが並ぶ中軸から、計4三振。スローカーブで目先、タイミングを丹念にずらした。視覚効果で速く見える直球、フォーク、スライダーを決め球に、完璧に仕留めた。

 理想はあるが、現実を見る。この日の最速は139キロで、最遅は90キロ。「本当は、もっと速いボールを投げたいんですよ」。パワー投手がトップランナーの大半を占める現代野球。23歳の若者らしい、本音を胸に秘める。同世代の大谷、有原ら剛球派で、同じ本格派右腕が並ぶ先発陣で、異彩を放つスタイルに徹し、特長を発揮した。栗山監督が「勝つ投手っていうのは、強いボールを投げるだけじゃない。(他投手は)勉強になったと思う」と、うなる配球の妙だった。

 救世主の予感が漂う。期待の浦野は中継ぎへ配置転換、上沢は2軍で再調整。中村はシーズン序盤に2試合登板も、いずれもKO。「自分の実力のなさが分かりました」と一時は打ちのめされたが、はい上がった。2日に1軍再昇格のチャンスをつかみ、3戦連続で快投。次回登板は敵地30日ソフトバンク戦の予定。重要な首位攻防のマウンドも、任されることが濃厚だ。「おなかが出ないように気になって」。食べ盛りだが我慢し、深夜の炭水化物を控える日々。野球でも私生活でも見せる驚異のストイックさが、反発力の源。大勝負の反攻の秋へ、シンデレラボーイになる。【高山通史】

 ▼日本ハム中村が今季初完投で2勝目を挙げた。完投は昨年5月24日DeNA戦(札幌ドーム)で完封勝利をマークして以来、通算2度目。今季チーム4人目、のべ8度目(大谷4、吉川2、上沢1、中村1)。中村の7奪三振はプロ入り最多で、今年の8月9日楽天戦(札幌ドーム)など3試合の6奪三振が過去最多。