今季限りでソフトバンクを退団する松中信彦内野手(41)が、本拠地最終戦の楽天戦に7番DHでスタメン出場した。1点を追う9回無死一塁では松井裕の直球に空振り三振。チームも5連敗となった。平成唯一の3冠王は、19年在籍したチーム最後の試合を終え、ファンにあいさつ。他球団での現役続行の決意を伝え、王会長からの花束に涙した。

 涙が止まらなかった。ファンの声援を受けて右翼スタンドの前に向かった松中は、何度も涙をぬぐい、感謝の思いを口にした。鳴りやまない「信彦コール」に、平成唯一の3冠王は目頭を熱くした。

 「ホークスに入ってよかった。本当にありがとうございます。最後、いいところを見せたかったが、こてんぱんにやられました。でも、ここからがスタート。悔いのないよう、最後まで精いっぱい野球をしたい。この先、もしホークスと戦うなら、倒しに来ます」

 最後の一打はならなかった。19年間プレーしたホークスでの最後の試合。松中は7番DHでフル出場も、4三振。6回1死満塁、逆転サヨナラ弾が期待された9回無死一塁と、見せ場でバットは空を切った。

 この日は家族をはじめ、地元熊本・八代から両親や知人ら約70人が応援に駆けつけた。打撃練習では40球中25本の柵越えを放った。試合前の円陣では「強いホークスを見せて下さい。締めていきましょう」と、声を張り上げた。

 実は引退も覚悟していた。今季は左肩痛で代打一本勝負を宣言していたが、8月下旬から守備練習を再開した。「これだけ待ってチャンスがないなら、もう(1軍は)ないのかな。でも、引退試合をしてもらえるなら一塁で出たいんだ」。現役続行への思いを持ちながらも、チーム内での引き際がきたことを感じ取り、引退に向けた準備も始めていた。それだけ葛藤していた。だが、1軍の打席に立ち、自らの進むべき道を決断した。

 松中は今日2日に出場選手登録を抹消され、自由契約選手となる予定。今後はジムなどで練習を続け、他球団からのオファーを待つ。「最後はホークスで終わりたい気持ちはあったが、それ以上に野球がしたい。悔いのない野球人生を送りたい」と話した松中。大好きだったホークスに別れを告げ、新たな道を歩む。【福岡吉央】