誰も右腕を責められない。広島大瀬良大地投手(24)は両軍無得点の8回に登板し3点を失った。勝てば3位、3年連続のクライマックスシリーズ進出を決められた一戦で、敗戦投手となった。シーズン途中に任された中継ぎの役割を全うしながら、最後に力尽きた。降板後はあふれ出る涙を抑えきれずに、泣いた。

 無念の試合後、大瀬良にはサインボールをスタンドに投げ入れる力も残っていなかった。降板直後は気丈な態度を見せていたが、ベンチに腰を下ろすと堪えていたものがせきを切ったようにあふれ出した。しばらく顔も上げられない。試合後のセレモニーでは先発前田に背中をたたかれ、再び涙があふれ出した。大歓声をくれたファンに左腕でサインボールを投げ入れるのが、精いっぱいの感謝の表現だった。

 中継ぎで42試合に投げた。身を粉にしてきた右腕に振り絞る力は残っていなかった。0-0の8回。先頭平田に初球低めカットボールを中前打されると、1死二塁からエルナンデスに左前にはじき返された。均衡を破られ、藤井には左中間へ適時三塁打。わずか8球でマウンドを降りた。

 開幕ローテーションに入りながら、6月10日から中継ぎに配置転換された。2試合連続失点を経て、徐々に安定した投球を見せた。だが、周囲の信頼が高まっていく一方で、大瀬良は自信を得られずにいた。「もともと中継ぎで投げている投手がいて、本当に僕が大事な場面で投げていいのか」。体重の増減が大きい体質で、練習の前後で体重が4キロ落ちることも珍しくない。その中で日々訪れる登板に備えた。迷いをかき消すようにホールドを記録し、チームに勝利をもたらした。混戦の中で最後まで優勝を狙い、クライマックスシリーズ進出を争うことができたのは、セットアッパー大瀬良の存在がなくてはなかった。

 緒方監督は「不慣れなところでシーズン51試合投げてもらった。最後は体がいろんな意味でしんどい部分があった。大地に責任はない」とかばった。監督もチームメートも、ファンも誰もが大瀬良を責めていない。だが、この日流した涙を大瀬良は忘れないだろう。この悔しさは、来季から復帰することが濃厚な先発マウンドで晴らせばいい。【前原淳】