福岡市内ホテルで行われたプロ野球名球会の総会と前夜祭に参加した阪神金本知憲監督(47)が10日、ソフトバンク王貞治球団会長(75)からエールを授かった。昨季、指導者経験がない新任で日本一に導いたソフトバンク工藤監督を好例に挙げ、同じ境遇の金本監督に発奮を望んだ。今日11日の「名球会」対抗戦ではセ・リーグ監督として「初采配」を振るう。

 左胸には名球会の黄金エンブレムがきらびやかに輝く。プロ野球で名を色濃く刻んだスターだけが一堂に会する名球会の前夜祭。金本監督は壇上最後方で前田智徳氏、宮本慎也氏らと写真に納まった。豪華な顔ぶれのなか、新人監督にエールを送る大御所がいた。「世界の王」だ。巨人で868本塁打を放ったソフトバンク王会長は金本監督の境遇を察して言う。

 「(現役時代に)これだけ経験している。監督、コーチの経験がなくても工藤監督のいい例がある。経験がないと、と今まで言われていたけど、それがなければということではないのを示してくれた。若返りを図るためにも(工藤監督が)いい手本を示してくれた」

 王会長が自軍の監督を例に挙げたのは理由がある。金本監督は12年に引退後、3年のブランクを経て、いきなり監督として現場復帰した。工藤監督も昨季、指導者経験ゼロで指揮官に就任し、1年目に日本一を達成した。監督に就くまでの道は1つではない。勝敗や選手の人生すら背負う監督業の重圧は巨人、ダイエー、ソフトバンクを19年間率いた王会長自身も身に染みている。だから、球界の後輩を思いやる。「金本君も精力的に動いている。阪神の若い人も頑張ってくれるでしょう」と背中を押した。

 このひと言に金本監督も強くうなずいた。「ありがたいこと。逆に勇気づけられる」。今日11日は名球会メンバーの対抗戦でセ・リーグ監督を務める。総監督は王会長。同じベンチで貴重な時間を過ごす。「横に行くよ。できるだけいろんな話を聞こうかな」と声をはずませた。現役、そして指揮官として栄光も地獄も味わった。百戦錬磨の王会長から帝王学を吸収する、またとない機会だろう。

 プロ野球の伝説を作ってきた男たちと一緒に白球を追う。監督としての演出を問われると、恐縮しきりに「こんな場で何をできる。メンバーを見てみい」と苦笑いした。グラウンドで大暴れするのは、開幕後でいい。王会長が世界のホームラン王なら、金本監督は連続フルイニング出場1492試合の世界記録保持者。ともに頂点を極めた男同士が野球観を語り合う。球界の偉人からヒントを得て、エネルギーに変える。【酒井俊作】

 ◆王会長と金本監督 03年日本シリーズでダイエー監督と阪神の3番打者として対戦。第7戦までもつれる名勝負を演じた。金本は後々まで「王監督のチームとあのシリーズのような力と力の勝負をもう1度したい」と刻まれていた。06年4月に903試合連続フルイニング出場の世界タイ記録を作った金本にソフトバンク王監督は「次は1500試合を目指して欲しい」と談話を残した。新聞紙上で目にした金本は「あと4年かかる」と絶句しながらも「王さんに言っていただいたので…目指したい」と請け負った。