派手さはない。だが、決して簡単な技でもない。阪神鳥谷が意地の1本だ。1点リードの8回1死満塁、カウント2-2。ゴロ併殺打と三振だけは避けたい場面。「なんとか当てればと思って」。内角136キロ直球に詰まりながら右中間に飛球を運んだ。右翼鈴木のスライディングキャッチに阻まれるも、貴重な犠飛でリードを広げた。

 8番鳥谷-。先発メンバー発表の終盤に甲子園がどよめいた。7年ぶりの8番降格に結果で返した。2回2死では岡田の外角スライダーをライナーで左中間へ。左翼エルドレッドの緩慢な動きを突いて一気に二塁を陥れた。この日は二塁打1本、犠飛1本。存在感は見せた。

 金本監督は8番鳥谷の意図を問われ「純粋に考えて(7番に置いた)原口の方が期待できるから」と説明。「8番が嫌なら、自分でちゃんとはい上がって、階段を上って調整して、調子を上げてくればいいだけの話」と続けた。求めるハードルは高い。結果で見返せ、という決断には結果で応え続けるしかない。

 遊撃守備では9回、上空で強風が揺れ動く中、先頭鈴木の後方への飛球を懸命に追うもキャッチできず。直後に代打安部の同点2ランが飛び出す悔しい展開もあった。ここ最近は名手らしからぬミスも目立っていたが、指揮官は「油断したようなプレーじゃなかった。本当のポテンヒット」と冷静に分析。今回はキャプテンの姿勢をねぎらった。

 ここ7試合は25打数8安打、打率3割2分。徐々に状態は上がっている。「打順は自分で決めることじゃない。言われたところでしっかり頑張るだけ」。チームのために。言葉に覚悟がにじみ出た。【佐井陽介】

 ▼阪神鳥谷の先発8番は、09年6月14日ロッテ戦(千葉マリン)以来、7年ぶり。この時は3番で不振に陥り、カンフル的に1番に変更されたが、状態が上向かずに降格した。交流戦以外では、06年7月15日の中日戦(京セラドーム大阪)以来。今季は3番で12試合、5番で6試合など中軸も担ったが、4番と9番以外はすべて経験。