虎打線がアーチ攻勢で逆襲への足がかりをつかんだ。3回に阪神福留が勝ち越し3ランを放つと、5回には1番打者に入った糸井嘉男外野手(36)が10号ソロ、7回には中谷将大外野手(24)が15号2ラン。2試合連続3発以上を記録したのは6年ぶり。鯉をつかまえるため打ちまくるのみだ。

 病み上がりとは思えないスイングだった。2点リードの5回。糸井が原樹の内角スライダーを完璧にとらえた。打球は右翼席まで鮮やかな放物線を描いた。「振り抜けてよかったです」。5年連続の2ケタ本塁打となる10号ソロ。3回にも三遊間を破る同点タイムリーを放っていた。スタメン復帰となった18日の中日戦から、5戦で24打数9安打4打点。打率は3割7分5厘。完全復活の働きを見せた。

 右脇腹を痛め、1カ月間、戦線を離れた。打者にとって、脇腹は再発の不安が常につきまとう。「怖さはあるけどね…」。この日の試合後には、そう漏らした。それでもグラウンドに立てば、全力プレーを心がける。特に糸井の場合は、試合に出る思いが人一倍強い。交流戦中には、左太もも裏を痛め、先発から外れた。リーグ戦再開直前に代打で出場したが、ベンチ裏で準備に取り組む姿は鬼気迫るものだったという。「故障を抱えている選手とは思えない雰囲気で、思い切りバットを振っていた」と球団関係者は言う。今回も故障明けから、フル回転の活躍だ。

 終盤のラストスパートに打って出るチームにとっても、糸井の存在は心強い。この日、6月9日のソフトバンク戦以来、1番に座った。福留が3番で重要な役割を果たし、1番糸井との組み合わせは相手投手にとって脅威になった。金本監督も「確かにそう。1番バッターに長打があるから」とうなずいた。中谷も主軸で固定できており、打線は確実に厚みを増している。

 熱狂的な神宮のファンの声援を受け、糸井は軽快な足取りでバスに乗り込んだ。「勝ててよかった」。今季はキャンプ前から故障でスローペースの調整を強いられた。シーズン中もケガに苦しむが、そのたびに強い姿で帰ってくる。糸井の真骨頂を見た。【田口真一郎】